Blues' notes

ロンドンの青いフットボールクラブ、チェルシーの試合やニュースについて思うままに書いてます

チェルシーの補強に対する違和感 ー 物語性の欠如

チェルシージョアン・フェリックス獲得で合意した模様です。アーセナル他多数のクラブが買取OP、給料負担、ローン費用などの契約条件で合意に至らない中、強奪のような形になりました。

f:id:fujimaki304:20230110121549j:image

 

この動きを踏まえ、最近僕が感じているボーリー政権チェルシーの補強に対する違和感を書き起こしたいなと思います。

 

結論、それは「選手、クラブ両目線での物語性の欠如」です。

 

ファンは選手に対して物語(ストーリー)性を求めています。例えば、19/20のPL最終節、ウルブズ戦でマウントが直接FKを決め、CL権獲得に導きました。この時、少年時代のマウントがロナウドを真似てFKを蹴る動画が拡散され、「全く同じ軌道のシュートを愛するクラブの重要な局面で決めた」というストーリーと相まってファンは試合の余韻を楽しんだはずです。

f:id:fujimaki304:20230110121757j:image

f:id:fujimaki304:20230110121825j:image

 

僕はコバチッチが妥当と思っていたクラブのシーズンの最優秀選手にも、このゴールがきっかけでマウントが選ばれ、翌年の大ブレークに繋がります。

 

希代のスター選手には皆、語られ続ける物語があり、メッシのW杯優勝は最も美しいシナリオだったからこそ感動がありました。

 

 

一方、クラブ目線での物語とは、悲願のタイトル獲得、ドン底にいたチームの成長、欠けていた最後のピースを埋める補強、レジェンドから若手へのバトンタッチなど、エモーショナルな出来事によって紡がれます。

 

例えば、リバプールは17/18のCL決勝、サラーの負傷交代とGKのミスが絡んで敗北しました。しかし、CLで対戦したローマのGKアリソン、当時PL最高のCBと言われたファンダイクを獲得して「最後のピース」を埋めると、バルサへの歴史的逆転勝利を経て再び辿り着いた決勝では前年に涙を流したサラーがゴールを決めて優勝を果たしました。

 

チェルシーでは、20年夏の補強は物語性がありましたね。まず、CL決勝で敗れたチアゴシウバがランパードとの電話によって加入を決めるというエピソードがあり、ずっと狙っていたチルウェル、ヴェルナーを獲得。メンディも望まれていた長身のGKで、選手にもフランスの下部リーグから這い上がったというカンテと重なる物語がありました。

 

そしてなにより、噂が出つつも中々決まらないハヴァーツに対してサポーターがSNSでクラブや選手に大量のリプライを送り続け、獲得発表の映像でそれをクラブ側がネタにするという流れ。19年夏の補強禁止処分を乗り越えた待望のビッグサマーということも重なって、サポーターは最初から選手への期待と愛着が高かったと思います。

 

21年夏の補強も失敗でしたが、ストーリー性はありました。CL優勝を果たしたチームの「最後のピース」として加入したルカクは、ドログバのお墨付きと、「チェルシーでやり残したことがあるから帰ってきた」という背景、失敗続きの「背番号9」復活への期待など、最初はチームへ期待感をもたらしてくれたと思います。

 

以上で例に挙げた選手、クラブ両目線での物語性ある補強と比較して、今のチェルシーはどうでしょうか。オーナー、監督、補強担当の誰が望んでいるのかはっきりせず、補強ポジションなのかすら怪しい選手の獲得が噂もなく突然決まり、背番号の割り振りは適当で、前体制で力を入れていた獲得発表のムービーもなくなりました。ライバルクラブ出身選手の獲得に対する慎重さも皆無です。

 

選手目線でも、オーバメヤンアーセナル時代の自分を右腕に彫っており、FA杯決勝でチェルシーを沈めた存在です。彼の加入後に撮られた映像では、アーセナルサポーターへの罪悪感とも取れる微妙な表情が見られました。お互いにとって、実利だけを求めた移籍で、物語としては美しくないです。

 

これではサポーターは、新加入選手へ愛着も期待も持てません。スターリング、オーバメヤンについては未だに自分の応援するクラブの選手であることを実感できず、傭兵に無駄なお金を払って「スカッドのネームバリュー」を買っているように思えます。

 

本題のフェリックスについて、僕は計画性の見えない補強だなという印象です。タイプ的にはハヴァーツ、マウントと似ていますし、半年ローンにしては年俸負担、ローン費用が高過ぎます。本当にポッターの望む補強なのか?という疑問もあります。

 

結局、シメオネアトレティコに合うわけない選手だと思っていた第一印象から変わらず、攻撃の戦術がないチームで苦しんだ印象なフェリックス。チェルシーが、フェリックスが活躍できるようなチームならマウントやハヴァーツが活躍できているはずです。

 

また、フェリックスの価格は実力以上にスター性による上乗せがあると思います。それは何の物語性もないチェルシーへの移籍で発揮されるものではなく、ぐちゃぐちゃのパズルの小さなピースとして苦しむフェリックスは見たくありません。彼はアンチェロッティに望まれてエバートンに行った時のハメスのような移籍が似合います。王様として輝いてほしいです。

 

エンソ、ムドリクの噂と合わせて、他クラブも望む有力株に片っ端から入札しようとしているようで、どれも計画的な補強とは思えません。怪我人多発による一時的な人員補充だとしても、欲しいのはそこじゃありません。ハヴァーツ、マウント、ギャラガーがシャドーで起用できますが、彼らはほとんど怪我しないので、彼らの代役を探すよりも、彼らが生きる戦術をやるために必要な他のポジションを狙うべきではないでしょうか。

 

 

 

ユース育成の戦略についても、僕は懐疑的です。ユースの下の年代からチェルシー一筋だった選手(マウント、ジェームズ、エイブラハム、トモリ、チャロバー)が、チームの主力になったり移籍金を残してくれたりと成功している裏で、アンパドゥ、ギルモアら、16〜18歳頃になって獲得した選手は今のところ上記のメンバーとは差が開いています。

 

この反省を生かさず、ハッチンソン、カサデイ、チュクウェメカら若手を、そこそこ高額な移籍金で青田買いしまくっているという方針が僕は解せないです。マドリーのヴィニシウスのように、ちゃんと長年に渡って品定めをし、獲得後も上向きの成長曲線を辿る青田買いなら理解しますが、チェルシーは数打てば当たる、転売すれば良い、という思惑が透けて見えるので印象が悪いです。

 

チェルシーのユース戦略の目指すべき方針はSRを探し当てるために青田買いガチャを引くことではなく、ユースで下の年代から育ってきたSRになりうる原石たちをクラブに残し、定着させることではないでしょうか。グエイ、ランプティ、リブラメントらチェルシー一筋の選手は他クラブで活躍しています。サポーターとしても、チェルシー一筋の選手の方が愛着が湧きますし、18歳になってやってくる選手よりも、幼少期から青い血が流れている選手を大切に扱ってほしいです。

 

以上、ふわふわと思っていたことを言語化しました。ユース戦略のところについては青田買いすべきという意見もわかりますので、批判も歓迎です。ただ、クラブを仕切るビジネスマン達には、サポーターの「感情」でフットボールビジネスが回っているということを忘れないでいただきたいと思います。

欧州最高の舞台を前に

日本時間5/30(日)の4:00から、いよいよ20/21シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝が行われます。

会場はイスタンブール🇹🇷から変更になり、ポルト🇵🇹の本拠地であるEstadio Do Dragaoに。

決勝はマンチェスター・シティvsチェルシーイングランド対決になりました。

f:id:fujimaki304:20210529010858j:image

 

今回はチェルサポ目線で

1.両チームの状況

2.試合の展望と予想スタメン

3.注目選手

4.CL決勝の重み

5.個人的な思い

について書いてます。他サポも多く視聴するCL決勝ということで、プレミアを見ない人にも分かる文章を心掛けているので、最後まで目を通していただければ幸いです。特に4、5については僕が本当に伝えたい気持ちなので、そこだけでも読んでください。それでは。

 

 

1.両チームの状況 

シティ

ペップ5季目で、完成度はシティ史上最高レベルです。ルベン・ディアスの獲得を機に不安定だったストーンズが輝きを取り戻し、守備が改善。デブライネ、マフレズら元々いた攻撃的なタレントはそのままに、バックラインの不安が解消されたことで大きく進化を遂げました。

今季はCL制覇のためか、シーズン終盤にピークを持ってくるマネジメントを行ったと言われています。リーグ序盤はレスターに5失点の大敗を喫するなど苦しみましたが、尻上がりに調子が向上。鬼門のCLベスト8を越え、独走でプレミア優勝を果たしました。

リーグ最終節では今季退団のアグエロがエティハドでのラストゴールで自ら花道を作り、5-0勝利とコンディションは最高潮。怪我人もゼロで、まさに取るべくして取る状況が整ったという感じでしょうか。

 

チェルシー

夏に300億の大補強を敢行。結果として全員「当たり」だと言っていいと思います。ランパード政権下で一時はスパーズと優勝争いか?と言われましたが、12月に調子を地の底まで落とすと、戦術や決まり事の不足が囁かれて急転直下の監督解任劇。

それでも、後任のトゥヘルが3バックを導入して燻っていた選手たちを復活させるという鮮やかな手腕でチームに守備を植え付け、快進撃でCL決勝へ進出。リーグでも9位から4位まで引き戻し、CL権を何とか確保しました。

ただ、主力の怪我や深刻な決定力不足が尾を引き、マドリー戦前後の強さと勢いが削がれているのは懸念点です。怪我人としては、クリステンセンが負傷明け、カンテが強行出場可、最終節で負傷したメンディも恐らく間に合うという状態です。

 

 

2.試合の展望

上記を読んで察したかと思いますが、互いに「守備の安定」によってここまで上がってきたチームです。堅い試合が予想されます。

ハイプレスで高いポゼッションをキープして打開を図るシティと、相手にボールを持たせながらも決定機は作らせず、カウンターを狙うチェルシーという構図になるでしょう。

 

実際ペップ就任以降のこの2チームはそのような対戦が多いです。いつの時代もチェルシーの堅守速攻はシティを苦しめてきました。16/17(Away1-3)、18/19(Home2-0)、19/20(Home2-1)など

f:id:fujimaki304:20210529021254j:plain


逆に言えば、チェルシーがカウンターではない戦術を選択した時は試合にすらなっていません。18-19(Away0-6)、20-21(Home1-3)など。

f:id:fujimaki304:20210529010932j:image

 

「ドン引きカウンター」に勝機を見出すチェルシーですが、それを行うには世界最高峰と言えるタレントが揃っています。対人最強のアスピリクエタとリュディガー、カウンターの申し子ヴェルナー、プレス回避名人のジョルジーニョコバチッチ、マウント、そしてカンテ。

 

これを崩すべく戦うシティもスター選手揃いです。スターリングは調子を落としていますが、デブライネ、マフレズらを擁する攻撃陣は何もないところからもゴールを生み出す脅威があります。

 

シティの基本戦術はハイプレスで相手を押し込み、ポジションチェンジによって守備に綻びを生み出します。深い位置に進出した選手の折り返しや、サイドのWGのドリブル突破、ワンタッチでの崩しなどあらゆる攻撃手段を持っており、並のチームでは攻められ続けたらいつかは決壊するでしょう。

 

一瞬のミスも許されないプレス合戦が続き、徐々にシティがボールを握る。そこからチェルシーがカウンターを繰り出すというのが前半の流れになると思います。それに合わせて両指揮官が戦術の修正を行い、後半も序盤は探り合う展開が予想されます。アグレッシブになるのはラスト15分。そこまでの展開次第でドラマがあるか、という感じが僕の展望です。

 

今季の両者の対戦は3回。シティの1勝2敗ですが、直近2試合は(特にシティが)メンバーを落としていたので力関係という意味では参考にはなりません。それでも、その2試合ではチェルシーが無理にボールを持とうとする姿勢は見られなかったので、概ね展望通りになると思っています。

 

さて、両チームの予想スタメンです。

f:id:fujimaki304:20210529000809j:image

f:id:fujimaki304:20210529000813j:image

 

シティについては調子が加工気味のロドリ、カンセロをどう使うか、アグエロの出場はあるのかなどが注目です。ですが、怪我人もいないので概ねこのスタメンと見て良いと思います。

 

チェルシー側はいくつか気になる点が。やはり右CBとWBの人選、カンテ、メンディの出場、マウント以外の前線のメンバーは不確定です。

 

最近のリーグ戦ではジェームズがCBに起用され、アスピリクエタが右WBを務めています。しかし、クリステンセンが使えるとなれば彼がCBでスタメンを張り、アスピリクエタの右WBがベストです。スタメンが発表された段階でそもそもクリステンセンが出るのか、出ないならアスピリクエタとジェームズはどちらがCBなのかというのが一つ注目です。

 

また、カンテが90分持つかというのも問題です。マドリー戦で2試合とも最優秀選手に輝いた彼がここにきて負傷したというニュースは大きな打撃。コバチッチも負傷明けから2試合連続自陣でボールを奪われて失点に関与しており、厳しい状態です。カンテとジョルジーニョの2ボランチで行けることを祈ります。

 

前線の人選で悩ましいのは、序列の低いジェシュが大一番で得点を挙げているからです。現状、チェルシーの3トップはマウントが当確、次点でヴェルナーとハヴァーツ、その次にプリシッチ、そしてジェシュとオドイがジョーカー的に使われます。

 

ただ、ジエシュはCLアトレティコ戦、FA杯とリーグのシティ戦で得点しており、アヤックス時代もCLベスト16、準決勝でゴールを決めるなど大舞台に強いです。相性補完を考えるとスタメンはヴェルナー、マウント、ハヴァーツだと思いますが、個人的にはジエシュの試合を変える力に期待しています。

f:id:fujimaki304:20210529002539j:image

 

 

3.注目選手

シティで今季特に輝いた選手といえばルベン、ギュンドアン、デブライネ、カンセロあたりでしょう。しかし、最も重要な役割を担っているのはフェルナンジーニョだと僕は思っています。

f:id:fujimaki304:20210529003130j:image

守備の選手ですが縦パスやプレス回避の技術も当然備えており、なんと言っても相手が嫌がるプレーの達人です。2013年から在籍する最古参の1人で、36歳になった彼はライン間で受ける選手を潰し、相手が勢いよくプレスに来たらファウルを誘います。時間稼ぎやテクニカルファウルも上手く、まさに決勝で相手にいてほしくない選手の代表でしょう。

 

チェルシーは何と言ってもメイソン・マウント。少ないタッチ数で局面を変えるプレーは、彼のポジショニング、ボールタッチ、視野の広さ、俊敏性、キック力など様々な能力の高さの結晶です。

f:id:fujimaki304:20210529011034j:image

チェルシーの攻撃はカウンター以外はっきり言って脅威ではありません。しかし、マウントが絡むと途端にスピードアップし、一気に期待感のあるシーンが生まれます。ポルト戦、マドリー戦のように消えていても一瞬で顔を出してゴールを取れる選手なので、天才の閃きに期待しています。

 

 

4.CL決勝の重み

ビッグイヤーの獲得は全世界のフットボーラーの悲願です。このタイトルがあるかないかは永遠にその選手の価値を分けます。イブラヒモビッチバラックブッフォンらの輝かしいキャリアはこの一つのタイトルがないだけで曇ってしまいます。「メッシはW杯を取れない限りマラドーナは越えられない」と看做されるのと同じです。

ジェラードが伝説となったのはなぜか。イスタンブールで逆転の狼煙を上げて奇跡を起こしたからです。

f:id:fujimaki304:20210529022719j:plain

モウリーニョがいまだに"スペシャルワン"と呼ばれるのはなぜか。アンダードッグだったポルトでCLを制したからです。

f:id:fujimaki304:20210529022554j:plain

現チームの主将で400試合以上出場しているアスピリクエタは、ビッグイヤーを掲げることができれば真のレジェンドとして記憶されるでしょう。この1試合は選手とクラブの価値を大きく左右します。

 

今の欧州サッカーに、CL優勝を果たした選手はどれくらいいるでしょうか。もはや現役でプルーしているのは、ほぼバルセロナ、マドリー、リバプールバイエルンで優勝を果たした一握りの選手たちに限られます。15年くらいの選手キャリアの中で、この舞台に立てるチャンスは運にも恵まれないと回ってきません。

人生に箔が付くかを賭けて戦うからこそ、そしてその重みが伝わってくるからこそ、ファンも緊張するし、メディアもこれだけ注目する。その重みを知って見れば、CL決勝が数倍面白くなるはずです。こいつらは人生を賭けて戦ってるのかと、分かっていればミスも笑えないしPKを外した選手も批判できない。真剣に見てこそ楽しめる試合だと思います。CLとW杯の決勝は。

 

特にシティとしては絶対にここで取りたいでしょう。アラブオーナーの買収から10年以上が経ち、ペップ政権も5年目。ペップとしては世界最高の監督という評価を受けながらも、バルセロナでの10/11以降10年間獲得できていないCLのタイトルです。

モナコに負け、リヨンに負け、壁と呼ばれたベスト8を乗り越えて機は熟したはず。マフレズ、デブライネらはキャリアのピークで、アグエロ(もしかするとフェルナンジーニョも)というクラブの大レジェンドはラストシーズン。相手はマドリーやバイエルンではなく、勝手知ったるチェルシー。絶対に逃せないチャンスです。

  

f:id:fujimaki304:20210529011146j:image

ここに一つだけ足りないものがあるはず。それを取りたい気持ちは人一倍強いでしょう。

 

逆にチェルシー側は一見すると背負うものがありません。2012年、ドログバのラストキックでオーナーの悲願は達成され、軒並みピークを迎えていた主力たちはキャリアの終盤にこれ以上ない喜びを勝ち得ました。

f:id:fujimaki304:20210529011253j:image

その前には、雨のロシアでテリーがPKを外し、手を掛けていたビッグイヤーがすり抜けて行ったこともありました。

f:id:fujimaki304:20210529014550j:image

途方もない数のPKが見逃され、イニエスタにゴラッソをぶち込まれて準決勝で散ったこともありました。

f:id:fujimaki304:20210529014554j:image

これらを経験したからこそ、11/12の優勝は特別な意味を持ったのです。

 

その夏に加入したアザールと過ごしたサイクルでは、残念ながらビッグイヤーに届きませんでした。彼の旅立ちを見送り、昨季ランパードの元で新たなサイクルを迎え、トゥヘルが突貫工事で整えたチェルシーは、言ってみればまだ2年生。未完のチームです。来季以降もっとよくなるのは確実で、「ここで取れなくても」という将来への期待感はあります。

 

しかし、それは外から見た場合の話。昨季パリで涙を飲んだチアゴ・シウバにとっては悲願ですし、アスピリクエタはクラブのレジェンドになるためにこのタイトルが必要です。リュディガーやカンテはキャリアのピークにいます。マドリーの優勝をベンチで眺めたコバチッチも、自分の価値を証明する機会がやっと巡ってきました。マウントら若手はここで優勝してEUROへ乗り込めば一躍世界的選手の仲間入りです。

 

29歳のジョルジーニョは10年前、当時セリエCのエラス・ヴェローナにいました。チェルシーに来た際には母親がメガストアに訪れ、夢を叶えた息子のユニフォームを見て涙を流していました。そんな彼がマドリーとの2ndleg、タイムアップの笛と共にピッチに崩れ落ちたシーンは僕にとって忘れられせん。

f:id:fujimaki304:20210529013329j:image

彼の脳裏には、キャリアをスタートさせた頃にボロボロの芝でプレーをしていた自分の姿が映っていたかもしれません。そこから這い上がって欧州の頂点まで後一歩のところまで来た。あと一試合勝つだけ。彼の嬉し泣きが見たいです。

 

チェルシーというクラブとしても、シティにプレミアのタイトル数で追いつかれたことで燃えるプライドがあります。

 

"You'll never sing that. You'll never sing that.

'CHAMPIONS OF EUROPE'

You'll never sing that."

 

チェルシーサポーターがユナイテッド、リバプール以外との試合で歌う有名なチャントです。オイルマネーで成り上がったチェルシーが、本当の意味でメガクラブに数えられるようになったのは11/12のドラマがあったからでしょう。CL優勝は選手だけでなく、クラブの価値も変えます。

 

youtu.be

 

5.個人的な思い

まずは、"やるべきことをやり続けて"ようやくここまで辿り着いたシティと、この舞台で対戦できる幸せを噛み締めたいです。チェルシーはフロントと監督の連携、補強戦略等でリバプールやシティに遅れをとっています。

それでも、ランパードの元で花開いたアカデミーの選手たちは、クラブが長い年月をかけて投資を行い、欧州一となった育成組織の産物です。歩んできた道は間違っていなかったと、彼らが証明してくれれば、フロントも報われるでしょう。

f:id:fujimaki304:20210529012125j:image

 

そして何より、トゥヘルに感謝したいです。昨季バイエルンに敗れた2試合で感じた圧倒的な差。あれは1年で覆せるものではないはずでした。何年で追いつけるんだろう。3年?5年?リバプールのようなフロント体制でないと現代サッカーでは生き残れないのか?絶望感はかなりのものでした。

その差を埋めたのは他でもないトゥヘルの手腕です。どん底にいた12月のチェルサポに夢の舞台を見せてくれてありがとう。勝っても負けても、これだけは伝えなくてはなりません。

 

最後に、チェルサポにもシティサポにも一つだけ言わせてください。勝っても負けても恨みっこなしです。ここ20年余り、CL決勝では様々納得いかない判定はあったかもしれません。それでも、どの優勝チームも勝つべくして勝っている。PKが見逃されようが、VARでゴールが取り消されようが、受け入れましょう。運も味方につけないと勝てないのがCLです。

 

さて、欧州サッカー20/21シーズン正真正銘最後の試合となります。CL決勝、楽しみましょう。

f:id:fujimaki304:20210529023050j:image

 

チェルシーの現状整理

日本時間で4/28(水)4:00キックオフの大一番、CL準決勝1stLegレアル・マドリーvsチェルシーを前に、主にマドリディスタや他サポ向けにチェルシーの現状整理をさせていただきたいと思います。

f:id:fujimaki304:20210426140921j:image

 

33節を終え、国内リーグでのチェルシーの暫定順位は4位。ウェストハムとの直接対決で競り勝ったことで、CL圏獲得へ大きく前進しました。

f:id:fujimaki304:20210426141253j:image

 

【ここまでのチェルシー

現状を正確に伝えるには、ランパード監督が就任した19/20シーズンからの動きを線で振り返る必要があります。

f:id:fujimaki304:20210426161824j:image

昨季は若手がブレイクし、ベテランとの融合によってCL圏内の4位に滑り込みましたが、バイエルンとのCLベスト16、FA杯決勝のアーセナル戦に敗れて無冠に終わりました。

100点の結果ではありませんでしたが、ドタバタ就任とアザールの移籍、補強禁止処分を考慮すれば望外の好成績。夏に大量補強を敢行し、今年は躍進に期待できるという雰囲気がサポーターの間には広がっていました。

f:id:fujimaki304:20210426155659j:image

 

迎えた20/21シーズン。2節でリバプールに敗れはしたものの、その後は堅守とセットプレーの強さを武器に11月までは勝点を積み重ねます。チアゴ・シウバ、チルウェル、ジエシュなど、試合を追うごとに新加入選手がフィットし始めたことで一時は優勝候補扱いされた程。

しかし、昨季からの課題として残っていたカウンターへの脆さ、引かれた時の得点力、オープンな展開に引き込まれやすい点などが改善されず、12月はエバートン、ウルブズ、アーセナルに敗北。

f:id:fujimaki304:20210426155845j:image

戦術的にも個々のパフォーマンスでも「完敗」を喫したレスター戦が決定打となり、ランパードが解任され、後任はトゥヘルという形になります。

f:id:fujimaki304:20210426155903j:image

トゥヘルは就任から2日後のウルブズ戦でいきなり3バックを採用。以降、現在までのチェルシーの基本フォーメーションは3-4-2-1となっています。

さらに前政権で干されていたアロンソ、リュディガー、クリステンセンらを重用し、ハドソン=オドイを右WBに置くなど、選手の特徴から最適な配置を導き出す慧眼を発揮。

ポジショニングや役割が整理されたことで試合終盤までオープンな展開にならず、鉄壁のディフェンスを武器に上昇気流に乗せます。素早いトランジションの徹底やハーフスペースへの走り込みなど、現代サッカーで重要視される基本的な戦術もトゥヘルはすぐに落とし込みました。

 

代表ウィーク明けランチタイムKOという最悪なコンディションで大敗したWBA戦を除けば13試合でわずか3失点。

CLではアトレティコを2試合とも完封し、ポルト戦も2ndLegのATまではゴールを許しませんでした。その反面、得点力には課題が残りますが、1-0でビッグマッチを制する様はまさにスタンフォード・ブリッジが要塞と言われた頃を思い出させる「堅守のチェルシー」と言えるでしょう。

 

 

【躍進を支えている選手たち】

まずはチェルシーの王、メイソン・マウント。

f:id:fujimaki304:20210426162625j:image

今季のチェルシーのMVPはほぼ確定。信じられないスピードでワールドクラスへの階段を登っています。昨季終盤から課題だった「消えてしまう」現象が改善され、今はドリブル、パス、シュート、守備能力などあらゆる能力値がカンストのオールラウンダーに。

特筆すべきは一瞬で相手を剥がすターンと、ファウルを受けても止まらない推進力。

ポルト戦のゴールや、アトレティコ戦で複数選手のタックルをものともせずに運んだシーンに象徴されます。

f:id:fujimaki304:20210426163045j:image

これだけ高額選手を補強したチェルシーで、誰が見ても1番上手いだけでなく、怪我せず、メンタリティもプロ意識も高い彼は、マドリディスタや他リーグのファンにも知ってほしい逸材です。

 

次にコバチッチ。マドリーから来たこの男は昨季にブレイクスルーを果たし、今季は化け物じみた突破力とプレス回避能力でマウントに次いで安定したパフォーマンスを見せています。

f:id:fujimaki304:20210426163152j:image

彼と共に中盤を支えるのがジョルジーニョソン・フンミンにズタズタに切り裂かれたスパーズ戦あたりで時が止まっている人は彼の評価が未だに上がりきらないかもしれません。

しかしトゥヘルが、彼の短所が目立たないようにコンパクトな陣形を維持するようチームに浸透させたことで輝きを放ちました。今は被カウンター時を除けば中盤を支配する絶対的な軸となっています。

 

個人技ありきだったビルドアップも、動きやポジショニングが整理されたことでパスコースが増えて安定し、2ボランチのプレス回避能力とボール回収が目立つ結果に。

f:id:fujimaki304:20210426160004j:image

ここにお馴染みのカンテを加えた3人の中盤が当たり前のようにこぼれ球を拾い続け、ボールキープをすることでポゼッション率を担保しています。

 

攻撃面で違いを生むのはヴェルナー。決定力にはお世辞にも満足できませんが、アトレティコやシティを沈めたカウンターの鋭さは、接戦での勝利が多いチェルシーの重要な得点パターンです。

単純にアバウトなロングボールを追いかけてくれたり、GKまでプレスを掛けてくれるだけでも仕事はできるので、トゥヘルはヴェルナーが微妙な時でも滅多に交代させません。

f:id:fujimaki304:20210426160014j:image

最近は無理に降りてゲームメイクに関わろうとするシーンが減り、ポストプレーも徐々に身につけ始めました。ゴールとアシストを共に2桁に乗せ、PK奪取も7回と大貢献。怪我なしでここまで来ている彼はマウントと並ぶ攻撃の要です。

f:id:fujimaki304:20210426161205j:image

逆に、他のアタッカー陣はシーズン通してみると及第点以下。

ジエシュはムラがあり、ハヴァーツはプレー強度が高い試合では球際で競り勝てません。プリシッチは「調子が上がる→怪我→低調→…」のサイクルを繰り返しており、昨季のFA杯決勝での負傷交代を見れば分かる通り、起用にはリスクがあります。

何よりもスコアレスドローの多さが、決定力不足と守備の堅さを同時に示していると言えるでしょう。

 

 

【勝負を分ける中盤の質

強力な個人技を持つ選手たちを並べてポゼッションを行い、「攻められる時間の少なさ」「プレス回避能力」「精度の高いカウンター」を強みに「ウノゼロ」勝利を狙えるのがチェルシーの強みと言えるでしょう。ただ、それはマドリーの強みでもあるかもしれません。個の局面で差が出る試合になる気がしています。

個人的に勝負を分けると思っているのが、試合の主導権争いに直結する中盤のクオリティ。それだけにコバチッチ欠場は痛手ですが、マドリー側もコロナ陽性反応や怪我など不運に見舞われている印象なので文句は言えません。むしろこの段階で主力がほぼ揃っていることは奇跡に近いと思っています。

ですが、やはり相手の狙い目となるカンテのプレス回避、ジョルジーニョのスピードの無さを補えるコバチッチの不在は大きい。モドリッチ、カゼミーロ、クロースにバルベルデを加えた中盤は間違いなく"世界屈指"です。国内では個人技やサッカーセンスの差を見せつけているジョルジーニョやカンテが、CL三連覇メンバーを相手にどこまでやれるのか。また、明確な弱点と長所を持つ彼らをどれだけ周りがサポートできるか、あるいは不利と感じた時に中盤を省略した形で攻撃できるかが勝負のポイントになるでしょう。

f:id:fujimaki304:20210426165134j:image

例のツイート通り、チェルシーの中盤が"世界屈指"だと証明してほしいです笑

 

 

【予想スタメンと試合の展望】

f:id:fujimaki304:20210426144131j:image

これが現状のベストメンバーになります(Azpilicuetaのスペルはミスです)。絶対領域となっているのはメンディ、アスピリクエタ、チルウェル、マウントでしょうか。

 

GKはメンディで確定です。ケパも調子を上げていますが、トゥヘルはメンディの序列が上だと明言しています。彼は飛び出しの判断に課題がありますが、チアゴ・シウバやクリステンセンの落ち着いたプレーもあって露呈するシーンは少ないです。なぜか他サポやメディアの評価がイマイチ高くないんですが、守備範囲や反応速度は折り紙つき。ミドルはほぼ入りません。

 

続いてDF陣。右CBのアスピリクエタキャプテンシーやミスの少なさ、対人守備力を考えれば絶対的な存在です。チアゴ・シウバは怪我が多いですが、健康体ならスタメンに名を連ねます。絶対にマイボールにする守備の技術やロングフィードは未だ健在です。

彼の代わりができるまでに成長したクリステンセンとどちらが出場するかは、コンディションによると思います。トゥヘルの元で完全復活を果たしたフィジカル系CBのリュディガーは、左CBの不動のレギュラーと言っても過言ではありません。

ランパードに重用されたズマは集中力散漫なプレーやミスが目立ち、ロストしたのに全力で戻らない姿がSNSで糾弾されるなど序列を落としています。

直近の試合でアスピリクエタが右WBで出場したことで3CBのメンツは読みづらいですが、マドリー戦では左からリュディガー、チアゴ・シウバアスピリクエタで来ると予想されます。

 

中盤ですが、コバチッチが怪我で出られない1stLegはジョルジーニョとカンテの2ボランチになるでしょう。カンテは首振りの回数や視野の広さが他の2人に劣り、パススピードも遅いためビルドアップでは狙い目とされるかもしれません。ただ、本調子ならお釣りがくるくらいのボール奪取と運動量があるため、どれだけビルドアップの局面で彼をサポートできるかが鍵になりそうです。

 

左WBはチルウェルで確定と見て良いでしょう。最近は新しい役割に慣れ始め、上がるタイミングや裏へのスルーパスなどで違いを作れるようになっています。アロンソも一時期は好調でしたが、チルウェルがそれを上回る活躍を見せてレギュラーを掴んでいるのが現状です。

問題は右WB。ウェストハムとの大一番でアスピリクエタが起用されたように、ジェームズにもオドイにも課題があります。ジェームズはクロス精度とフィジカルが売りのSBですが、独力の打開力がありません。

本来は生粋のドリブラーであるオドイは、守備面が流石に本職SBに劣ります。個人的には対人守備能力を考えてジェームズを起用し、得点が欲しい時間にオドイ投入が本線です。

 

3トップはマウントが確定。ヴェルナー、ジエシュ、プリシッチ、ハヴァーツの4人の中からもう2人を選ぶ形になるでしょう。エイブラハムとジルーは干され気味です。カウンターを狙うことになるビッグマッチではヴェルナーが先発するので、問題はもう1枠でしょう。

トゥヘルはプリシッチをスーパーサブとして起用したいと思っている節があるので、恐らくジエシュかハヴァーツ。強豪相手との結果を見れば、アトレティコ戦、シティ戦でヴェルナーとの連係から得点を挙げているジエシュが選ばれる気がします。

 

【結論】

f:id:fujimaki304:20210426160606j:image

ということで僕の予想スタメンはこんな感じです。

 

ここで、チェルシーの基本戦術について説明します。

ボール保持時は幅を取ってボールを動かしながらマウントやジエシュがスペースで受けてチャンスメイク。非保持時はブロックを作って守り、適度に前から圧をかけてロングボールを蹴らせて回収、あるいはリトリートして引き込んでカウンターという形になります。

メンディやチアゴシウバ含めてセットプレーへの対応は素晴らしく、逆に最近はズマの控え降格もあってCKから点が取れていないので、セットプレーは勝敗に絡まない気がします。

マドリーは「大人なチーム」という印象ですが、チェルシーもそうなりつつあります。堅実にリスクを冒さず点を取り、ボールを保持して時計を進めながらリードを守り抜くことを目指す試合なると思います。

アトレティコ戦もポルト戦も、そのような展開から終盤に追加点を取れたことが勝利につながりましたが、マドリーがそんな隙を見せてくれるかは分かりません。とにかく少ないチャンスを決め切れるかというチェルシーの喫緊の課題を、この大一番で払拭してもらわねばなりません。

 

 

【古巣対戦の選手について】

コバチッチは1stLeg欠場が確定です。

f:id:fujimaki304:20210426160703j:image

彼の成長した姿を見てほしかった気持ちがあり、コバチッチ自身も親友のモドリッチとの対戦で、高い壁を超えたいという思いもあったでしょう。非常に残念です。

 

次にクルトワ。僕はそこまで嫌いじゃありません。彼、口がよく動くんですが、毎試合ゴール裏の子どもにユニフォームあげたりとか、チャントに拍手送ったりとか、良い面も見てきたんですよね。

f:id:fujimaki304:20210426160826j:image

何やり股以外の守備範囲は素晴らしかったし、間違いなく16/17の優勝に貢献してくれたことには感謝しています。まあ畜生であることには変わりないんですけど笑

 

最後にアザールスタンフォード・ブリッジで迎える2ndLegに出場してほしい。この1点に尽きます。夢を叶えたはずの彼が苦しんでいる姿を見るのはこちらとしても悲しい。とにかく健康体で彼のホームだった場所に帰ってきてほしいです。

f:id:fujimaki304:20210426160852j:image

親友であるアスピリクエタとのマッチアップは想像するだけで目が潤みます。アザールハットトリックするなら負けてもいいや、と思うチェルサポが相当な数いるくらい、彼はみんなのアイドルであり英雄でした。

f:id:fujimaki304:20210426160934j:image

本来なら万雷の拍手とチャントで迎え入れたいところ。ファンがいないスタジアムでの再会は切ないですが、ピッチで躍動する彼の姿を目に焼き付けたいと思います。

 

 

スーパーリーグ騒動の影響は?】

さて、最後にスーパーリーグについて。報道への動揺と疲れがあからさまに見えたブライトン戦は低調な試合となりましたが、事態がすぐに収束(?)したことで直近の試合は影響を感じさせませんでした。

トゥヘルも、「選手たちはもうスーパーリーグの話をしていない」と語り、依然としてペレス会長の処遇などに揺れるマドリーに比べれば吹いている風は弱いのかなと思います。

f:id:fujimaki304:20210426161453j:image

逆にチェルシーはいち早く脱退に舵を切り、不満を全力で表明したサポーターとの溝もアドバイザーであるチェフの尽力や、アブラモビッチオーナーの釈明文によって深まらずに済みました。一時はマドリー、チェルシー共にCLから除外かと言われた中で、しっかりと事態が収まり、純粋なフットボールの試合ができることが何やり嬉しいです。

 

以上、チェルシーの現状整理と、クラシコアザールが出ている試合くらいしかマドリーを見ていないチェルサポの勝手な展望でした。質問や指摘等あればTwitterのリプにお願いします。それでは初のチェルシーvsレアル・マドリーの公式戦、それもチェルシーは久々のCL準決勝です!楽しみましょう!!!

 

トゥヘルが1日でもたらした変革

f:id:fujimaki304:20210128123636j:image

現地時間1月26日にランパード監督が電撃解任。27日にトゥヘルの就任が発表され、1度のトレーニングのみで迎えた昨夜のウルブズ戦。

f:id:fujimaki304:20210128122944j:image

スコアレスドローに終わったものの、全体の内容と個々のパフォーマンスは、前節のレスター戦から見違えるほど良くなりました。1日でトゥヘルが何を変えたのか、自分が感じたことを書きたいと思います。

 

・解任ブースト

ここは先に触れておきます。監督交代直後に今まで立場が安定していた選手もアピールする必要が生じ、最初の数試合ブーストがかかるのはサッカーの常です。以降に述べるプレスバックの話などは、今後の経過も見て改善したかの判断を下すべき。チェルシーが劇的に変わったのがすべて「トゥヘルが1日でもたらした変革」ではないことは念頭におきましょう。

 

・スタメンの驚きと変化

f:id:fujimaki304:20210128124216j:image

これがトゥヘル初戦のスタメンです。メディアからのリーク通り、基本的な配置は4-2-3-1あるいは3-4-3ですが、実質的には以下のように歪な形をしていました。

f:id:fujimaki304:20210128131536j:image

特筆すべき点としては以下が挙げられます。

・オドイが右WB起用

・ジエシュがオドイと同サイドの右WG

・ハヴァーツが10番

ジョルジーニョコバチの2ボランチ

・絶対的存在だったマウントがベンチスタート

・CFがジルー

 

・試合内容

f:id:fujimaki304:20210128125839j:image

試合は80%近いポゼッションを維持したチェルシーが支配。相手に与えたチャンスは2〜3個で、攻め続けたチェルシーが、勝ち点1を是とするウルブズの守備を破れなかったという内容でした。

チェルシーは安定したビルドアップから、オドイのサイドでの突破、ジエシュのサイドチェンジ、ハヴァーツの飛び出しやコンビネーションなどでチャンスを作ります。終盤に交代出場のプリシッチ、マウントが躍動しますが、ゴールを割れずにスコアレスドローに終わりました。

 

ポジティブ要素

ランパード政権最低の試合だったレスター戦から明確に変わった点が多く、かなり良い内容でした。以下に2つに分けて書き連ねます。

 

・守備意識の改善

レスター戦について書いたブログで指摘した前線の選手のネガトラは特に良くなり、敵陣のファイナルサードでのリカバリーが16回と、奪われたらすぐに取り返すネガトラの意識が見られました。トゥヘルもこの点について満足したようなコメントを残しています。

 

f:id:fujimaki304:20210128130858j:image

試合終盤にも関わらず、オドイがこの位置からペナ内までプレスバックして決定機を防いだシーン、ハイライトに映っているネトのシュートシーンに付いて行ったジエシュなど、全体的な守備意識は素晴らしいものでした。

また、3バックということもあり、アスピやシウバが素早く前に出てカウンターの芽を摘むシーンも光りました。この2人は奪い方も上手く、コバチッチ、ジョルジーニョと囲い込んで取り切ることも多かったので、結果的に攻撃の時間が長くなりました。

ただ、守備の部分については解任ブーストの影響が多分に含まれます。サボる選手が使われないのは当たり前ですから、これが継続できるかは今後見ていかなければなりません。

 

・5レーンの使い方と役割の限定

誰も予想しなかったであろうオドイのWB起用は驚くほど機能していました。前半に対峙した19歳のエイト・ヌーリは相手にならず、後半は対人の強いセメドがサイドを変えて対応。それでも、1on1で完璧に振り切るシーンがあるなど、常に相手の上を行っていました。

終盤に左サイドに移ると、カットインからの右足でチャンスを作り、試合を通して攻撃面で違いを見せました。さらに、心配された守備面もアスピリクエタのサポートも受けながらそつなくこなし、前述のプレスバックでも貢献。MOM 級の活躍になりました。

 

恐らくトゥヘルが1日で選手たちに植え付けたのは5レーンの使い方。これが上手いシティを例にすると、WGが幅を取り、ハーフスペースに選手が飛び出してチャンスを作ります。簡単に言えば、ピッチを縦に5分割した各レーンに選手がポジションを取ることで、相手が対応しにくいという理論です。また、「選手の役割やポジショニングを限定する」ことで、限られたタスクに集中できるという側面があります。

f:id:fujimaki304:20210128132218j:image

今日のチェルシーは両WBがサイドに張り続けることで相手を広げ、ジエシュが右のハーフスペース、ハヴァーツがセンターと左右のハーフスペース、ボランチや左右のCBが余ったレーンを使って上手く攻撃を行っていました。

両サイドの大外に常に選手がいることで、ジエシュとシウバのロングパスを最大限に活かせます。常に、詰まった場合には逆サイドへの展開を意識することにも繋がります。そして、相手の両SBを大外にピン留めすることで、CBとSBの間を開け、そこへのフリーランニングでチャンスを作れます。ハヴァーツはこれができる選手です。

ハヴァーツを完全に自由に動かせ、ジエシュは基本位置だけ固定、他の選手は決められたレーンにポジションを取ることが徹底され、ジエシュとオドイ、チルウェルとハヴァーツのように、何度も同じ形で再現性高くコンビネーションプレイを見せていました。ここは明らかにトゥヘルが徹底させたことによる変化だと思います。

特にハヴァーツにとっては覚醒の兆しが見られる好ゲームになりました。ハヴァーツが最も得意とするのは、バイタルエリアでのプレー。今までのようにビルドアップに関与するために降りてくるのではなく、ある程度前線に位置し、前と左右への動きでチームの潤滑油となっていました。2ボランチが単体でもビルドアップに優れた選手で、3バックを使って数的有利による球出しもできたので、ハヴァーツが後ろに降りる必要が無くなっていました。トゥヘルが彼のような選手の活かし方を熟知していると、この試合だけで感じました。

 

また、最近は微妙だったビルドアップの安定感もありました。シウバが3バックの中央にいることで、左右にパスを散らしやすくなり、「ズマ(リュディ)がボールを持った時に混んでいるサイドに出しちゃう現象」や「チアゴシウバが持つと露骨にパスコースを切られる現象」が無くなりました。

意外に気付きづらい変化としては、ボランチのポジショニングでしょう。2人が離れ過ぎず近過ぎずのポジションを取ることで、ボール回収とビルドアップがかなりスムーズでした。コバチッチのキープ力と、ジョルジーニョの縦パスがかなり効果的に刺さっていたと思います。

これに関しても、2人には大外のレーンに出ず、中央の3つのレーン内にポジションを取るような指示があったのでしょう。今まではサイドの選手がボールを持った時に中盤が無駄に追い越してそのまま前線に残ったり、もらいに行き過ぎて狭くなったりというシーンが目立ち、ボールを奪われた後のリスク管理も疎かになっていました。

f:id:fujimaki304:20210128135615j:image

今日の試合では、ボランチの2人が相手の攻撃を未然に防げるようポジションを取り、サイドのフォローにはジエシュとハヴァーツが関わっていました。そして、3バックの利点として、左右のCBがサイドまで開くことで後ろのパスコースを常に供給できます。

ボランチの役割を絞ったこと、両サイドを大外に固定したこと、ハヴァーツをビルドアップ以降の攻撃に専念させたことで、攻撃に過剰に人数を割く必要が無くなったこと、3CBであること、などが相まって守備面での安心感が高まったのが最大の改善と言えるでしょう。

 

ネガティブな面

ここまでは守備意識と選手配置、役割限定が生み出した非常にポジティブな面について話してきました。

まだ就任初戦の段階でネガティブな面はあまり触れたくありません。サッカーは戦術以上に選手個々のパフォーマンスに左右されるのて、あくまで現在のトゥヘルに課せられた課題、今後課題になるであろう事柄を簡単に書き出すのみにします。

 

・致命的になり得るメンディの判断力

・チルウェルの最終局面でのプレーの質

・「チャンス」ではなく「決定機」の創出

・3バック+得点力のない2ボラ起用による後ろの重さ

・バリエーションは多彩で、再現性はあるものの、決定機を作るには至らない攻撃の改善

⭐︎各所で指摘されたドレッシングルームの分断

・マウントを含めた前線の選手の起用法

・出番がなかったヴェルナーの活かし方

・オドイ、プリシッチの継続性

・3バック、ボランチの個人能力に頼るビルドアップが対策された時の対抗策

 

今日の試合で感じたことは以上です。次節のバーンリー戦はともかく、その次のアウェースパーズ戦がトゥヘルへの評価の最初の分かれ目になるはず。今節のスコアレスドローという結果は満足できるものではありませんが、はっきりとした改善と、トゥヘルの手腕が見られた良い試合だったと思います。

f:id:fujimaki304:20210128135741j:image

 

とにかくここから順位を上げ、トップ4フィニッシュとCLの勝ち上がりに期待したいと思います。それでは。

 

 

チェルシーの現状

なぜチェルシーが弱いのか。大量補強を敢行し、12月までは首位争いを繰り広げたチームが失速した原因は何なのか。ランパード監督解任の契機となるかもしれないレスター戦(0-2●)を主に考察していきます。

f:id:fujimaki304:20210124130532j:image

ヴェルナーが槍玉に挙げられていますが、事態は選手1人に責任を押し付けられるほど単純ではありません。現状浮かび上がっているチームとしての問題点を指摘したいと思います。

 

 

・攻守のデザイン性の無さ

結論から言えば全てはこれに尽きます。約束事が無い、あるいは曖昧なので、プレーの方向性が定まっていません。ポジション配置と動きを身体と頭で覚えさせ、再現性の高い攻撃を繰り出すシティやリバプールと比較し、攻守に雲泥の差があります。

連動してプレスを掛けてきたフラム。ヴァーディーへの一本、サイドアタッカーアイソレーション、バイタルからのミドルなど、デザインされた攻撃を繰り出してきたレスター。所謂BIG6以外のチームでも、プレミアでは「約束事」を徹底してきます。

それに対してチェルシーは「約束事」自体が存在しないように見えます。レスター戦で言えば、チルウェルとタミーのパスのズレ、プリシッチが中に入ってハヴァーツの動きを阻害、中盤の選手が全員上がり、晒されるCB、等々。個々の役割分担、約束事が明確になっていれば生じないストレスが選手たちを苦しめていました。

唯一デザインされた形が見られたのは、オドイが中に入ってスペースを開ける→チアゴシウバが鋭いパスを送る→ジェームズがフリーでクロスを上げる、という右サイドの攻撃だけ。それも、オドイとジェームズのスイッチのタイミング相手のでマークの受け渡しが徹底されるようになり、そして、シウバが持った時に露骨に右サイドへのパスコースを切られるようになり、無効化されてしまいました。

「約束事が無いために再現性の高い攻撃の形がクロスに限られる」

これがチェルシー最大の問題点です。次点の「攻撃時のリスク管理」の話は後半に説明します。

 

・定まらない形と再現性の無さ

ランパードは昨季から3バックと4バックを併用していました。ただ、併用とはいえ、行き当たりばったりの戦術変更だったことは否めません。3バックで試合に臨む→機能せず、後半から4バックに変更→上手くいく→次の試合は4バックで挑む→後半から3バックに変更…………の無限ループ。

昨季はこれを繰り返していたらシーズンが終わりました。明確な形を見出せず、「穴が空いたら塞ぐ」ことで朧げな輪郭のまま4位に滑り込んだ、というのが実情です。

今夏に選手を獲得する際にはランパードが直電し、「魅力的なアタッキング・フットボール」を提示して説き伏せたという情報が各選手、メディアから上がっていました。では、その目指すフットボールの形は何なのか。簡単に言えば、守備時に「奪ってから縦に速く」のショートカウンターを意識させ、あくまで攻撃ありきで考えるフットボールという感じになるでしょう。ただし、そのためには色々とデザインしなければならないことがありますよね。

例えば、ボールの取り所と、そこから逆算したプレスの掛け方。そして奪ってからの繋ぎ方。長短限らずカウンターをやる際に選手に植え付けなければならない初歩的な項目が、チームで共有されていない、というのがランパードの手腕が問われている理由になります。ましてや、ヴェルナーに対して自らビジョンを話して獲得しておきながら、「活かし方がわからない」現状は、尚更その疑問を助長することになっています。特徴を活かすような決まり事があれば、「ヴェルナーが縦に走り、味方がパスを出す」がカウンターの形になるはずですが、ヴェルナーがパスの出し手になったり、独力で突破しなければならない場面が何度も見られます。

攻撃を「アドリブ」で行っている以上、再現性の高い攻撃は見られないでしょう。(アドリブが必ずしも悪いとは言いません。Bフェルナンデスのアイデアだけで首位に付けている赤いチームもあります)

 

・今季のここまでの戦い

迎えた今季、開幕から数試合は新戦力の試乗運転に苦戦し、怪我人の復帰待ちも相まって微妙な内容に終始しました。ハヴァーツとヴェルナーの使いどころが定まらず、得点力に不安を抱えながらも、徐々にチルウェル、チアゴシウバ、メンディらがフィットしたことで守備が安定。もう一皮剥ければ、という状態になりました。

f:id:fujimaki304:20210124113346j:image

そして、待望のジエシュ復帰により攻撃力が激増。バーンリー戦の前後から4-3-3の形がハマり出し、11月から12月初旬を無敗で駆け抜けます。

f:id:fujimaki304:20210124113704j:image

そして始まる地獄。エヴァートンへの敗北を機に、特にアウェーでは全く勝てなくなりました。ジェームズら、主力の離脱がモロに影響し、ヴェルナーは絶不調。守備も崩壊してしまいます。今のチェルシーはリーグの中で最も状態が下向きのチームと言っても過言ではないでしょう。

f:id:fujimaki304:20210124120720j:image

 

・良かった頃の攻撃

チェルシーの主な得点源は、

①個の能力によるプレス回避から、広いスペースを攻略

②速いパスによるサイドチェンジを駆使し、フリーになった(右)サイドからの高速クロス

③セットプレー

④気まぐれな2列目の飛び出し

でした。

シーズン序盤に上手くいっていた時はどうだったのかというと、チルウェル、シウバという個人でプレスを回避できる選手の加入によって、ビルドアップ時に相手の狙い所が無くなっていました。そして、好調状態のジェームズとジエシュの併用により、右サイドからのクロスは防御不可。さらに、覚醒ズマとシウバの打点、覚醒マウントとジエシュのキック精度によるセットプレーの得点源化。そして、コバチッチの飛び出しの意識改革により、深いスペースからの折り返しで得点を挙げていました。

 

・今の攻撃

まず、ビルドアップが対策されているのにも関わらず、監督は対抗策を見出せていません。チルウェルに対しては左足と縦のコースを切る、チアゴシウバは縦及びチェルシーの右サイドへのパスコースを切る、CBの相方とメンディへボールを持たせ、プレスを掛ける。基本どのチームをこんなことをしてきます。

よく見ている方なら想像できると思いますが、CBが自陣ペナ内くらいにポジションを取り、低い位置からビルドアップを行う時、SBと中盤に余裕が生まれるため、相手のプレスを剥がしてチャンスが作れることが多いです。逆に、CBがハーフウェーライン付近の高い位置からビルドアップを行う時、DFからのパスが引っかかって被カウンターあるいはバックパスをメンディが蹴って相手ボールになる、というシーンが多くなります。

低い位置からのビルドアップも、サッリボールのような型は見えず、選手の能力依存であるのに加え、ボールロストの原因となる高い位置でのビルドアップも、段々と選手たちがボールをもらいに降りてきてしまう感じを見ていると、決まり事が無いように映ります。シティは特にビルドアップを徹底しているので、これが彼らがシーズンを通して安定して勝ち点を拾える要因であるのは間違いないはずです。昨シーズンボコられたバも同様。アラバ、チアゴミュラーが軸のビルドアップの形がありました。ここを改善しない限り、優勝は夢のまた夢です。

 

・守備について

明確な問題点は「バイタルの管理、トランジション、リスクマネジメント」です。カンテの有無で、バイタルからのピンチの数は全く変わってしまいます。レスター戦でミドルを連続して浴びている時は、呆れを通り越して泣きたいくらい酷い守備でした。いつかのスタリッジ然り、エリクセン然り、マルシャル然り、よくバイタルからゴラッソを決められますが、これは所属選手の意識的に、放置していても直らない問題な気がしています。

次に、強かった時との大きな差はトランジションの速さでしょう。ジエシュ、ハヴァーツ、タミー、プリシッチ、オドイ、この辺りの選手を4人以上同時に起用するのは、守備を考えると不可能です。サボりはしませんが、彼らのボールロスト後の反応はマウント、コバチッチ、カンテらと違い過ぎます。

チェルシーの攻撃には2列目の選手がよく絡み、SBのクロスが攻撃の起点です。よくある、「ジェームズがクロスを上げるために高い位置を取り、マウントがエリア内に侵入している」状況でボールロストすれば、前線のトランジション意識が低いため、残りのDF3人+中盤2人の5人以下での対応を強いられます。なんなら、両SBをペナ脇くらいまで上げていることもザラですから、リスクマネジメントについては改善が求められます。

さらに言えば、別に人数を掛けたからといって、複数の選手が連動して動かなければ、得点を取ることはできません。「クロスまでの形」はあるチェルシーですが、「クロスに対するアプローチ」が全くデザインされておらず、2人の選手がニアとファーに分かれるという定石すら守れていないシーンも散見されます。

これらの問題点により、ハイリスクローリターンのフットボールになっているのが現状です。

 

・ジルーが必要な理由

ここで、少しCF3人の守備の話をします。昨季前半戦、速い攻撃を目指していたランパードがジルーを干していたのにはある程度納得できる理由がありました。2節のレスター戦で、エンディディからマウントがボールを奪い、そのまま初ゴールを決めたシーン。「奪ってから縦に速く」を目指すなら、鈍足でカウンターのスピードアップに難があり、プレスを掛ける瞬発力に秀でているわけでもなく、ポストプレーという一手間かかる攻撃が得意なジルーを外すのは原理としては納得できます。

ただ、3バックを常用したり、FCプリシッチになったり、「サッリボール」の遺産が薄れてビルドアップの形を見失ったり、タミーにロングボールを蹴りまくってポストプレーの下手さを露呈させたりしたせいで、後半戦では「目指してる縦に速いサッカーとはなんなのか」状態になりました。ここで、遅攻と、ビルドアップ無視のロングボール戦術を一人で担えるジルーに白羽の矢が立ったのです。

ランパードはおそらく、「自分の目指すサッカーにジルーは合わない」という「イメージ」を持っていますが、実はラストパスをずらすタミーが真ん中にいるより、ジルーが落としてくれた方がカウンターが上手く行きます。タミーは奪われると、手を広げてジェスチャーしますが、ジルーはよほど厳しい競り合いでない限り、奪われた後に追う意識は有ります。

「奪ってから縦に速く」はヴェルナーの十八番の形で、ライプツィヒ産の彼の守備意識はかなり高いと言えます。奪われるシーンは多いですが、すぐに追う意識が備わっています。WGは本適性とは言えないものの、現在チェルシーに所属しているWGを両サイドに置き、タミーを真ん中に置くと、「3トップが誰もネガトラしない」状態になります。ここで、中盤にハヴァーツが起用されていると、中盤もほぼ自動ドアです。最近ではコバチッチも被カウンター時の弱さを露呈するシーンが散見されます。

つまり、攻撃時に強みを発揮できないとしても、4-3-3で行くなら、現スカッドではヴェルナーをWGに置くか、CFをジルーにするしかないと僕は思います。

 

・ドイツ人コンビについて

シーズン前半ははそこそこ点を取っていたヴェルナーでしたが、そこまで重要な得点は無く、得点源とまでは言えませんでした。そして、ハヴァーツもカップ戦を除いて本領発揮したのは1、2試合。強さを支えていたのは堅守とクロスなので、ドイツコンビの不調は低迷にはあまり関係がないと思っています。

ヴェルナーはW杯で1トップをやらされた際の機能不全、モラタ並みのタッチのおぼつかなさと決定力の無さを見ると、シンプルに加速力以外の能力値がプレミアレベルでは足りていないという評価になります。「活かせていない」とは言っても、1試合に1回はデルピエロゾーンからのシュートチャンスを貰っています。○○なら、とは言いませんが、決める人は決めます。チャート右の、相手のボックス内でのタッチ数は昨季と変わりません。いい位置でチャンスは貰えているはず。大一番で決めて感覚を取り戻してほしいです。

f:id:fujimaki304:20210121001234j:image

ハヴァーツに関しては、コロナ感染もあり、厳しい状況に対して同情の余地は多分に有ります。ただ、マイペースというか、時間を掛けるプレーを好むので、プレミアの出足や詰めてくる速さに適応できていません。時折見せるワンタッチプレーは才能を感じますし、落ち着きは素晴らしいものがありますが、ご存知のようにパッションを好むプレミアでは、エジル同様ブーイングの対象になりかねないプレースタイルではあります。そして、コバチッチ、マウントとの差はパススピードとプレス回避、トランジションと山積。中央で前を向いてプレーするシーンが少な過ぎるので、彼のために4-2-3-1にするくらいなら、マウントがトップ下をやる方がいい気もします。

 

・相手に合わせた対応策の無さ

対戦相手の分析してるのか?と問いたくなるレベルで相手の長所を消せていません。少し前に、「不調の選手がチェルシー戦でなぜか活躍するのやめてほしい」とツイートしたところ、他サポから、「チェルシーにも原因があるのでは」と突っ込まれました。それを強く実感したのがアーセナル戦。チェルシーのプレスが弱く、抑えどころもはっきりしないまま、若手に躍動されて1-3。失点こそ理不尽ゴラッソ2発とPKでしたが、最近のアーセナルの試合を見ていてあそこまでチャンスを与えるチームはありませんでした。

レスター戦でもあそこまで危険なミドルを打たれたのはいただけません。今季だけを見ても、バーンズやマディソンはミドルからのゴラッソを決めています。まともな分析をしていれば、「少なくともオープンプレイでペナルティエリア手前からのミドルは打たせてはいけない」という意識くらいは試合前に確認してほしかったところです。ランパードだけの問題ではなく、コーチ陣全体として、分析をどこまで行なっているのかは気になるところです。

 

・コンディション管理と采配、修正

レスター戦では、マウント、メンディを除いて仕事をした選手は皆無と言っていいと思います。特に、ジャスティンとバーンズに完膚なきまでにぼこぼこにされたジェームズは猛省すべきでしょう。しかし同時に、怪我明けの彼を起用したランパードの采配はどうなんだ?という疑問符が付きます。今季はWGを中心にメンツがコロコロ入れ替わりますが、試合の入りが悪いと悪いプレーを繰り返すのがチェルシーの選手あるある。かつてはウィリアンがその典型でしたが、今はハヴァーツらを中心に、なんでこんな調子上がってないのにそもそも出したの?という試合が多過ぎます。WBA戦でHTに懲罰交代を喰らって以降干されているアロンソも、ある意味では謎采配の被害者でしょう。

レスター戦では、オドイとハヴァーツに変えてヴェルナーとジエシュを投入しましたが、変えるべきはタミーとプリシッチだったという声も多く、試合中の交代策、修正の稚拙さはランパードの明確な欠点と言えるでしょう(4-4-2の形にしたくてタミーを残したとしても、それは0-2で試すフォメではありません)。

また、負けている試合でよくやる、「中盤の潤滑油を削って前線の人数を増やす」交代策も、やめてほしいところです。今季は3-1-6のような形になることもしばしば。結果的に中盤でのボール回収やカウンターの歯止めに貢献していた選手がいなくなり、攻撃の選手は多いのに攻撃の機会自体が減少するという本末転倒な事態を招きます。これはプランBがない(そもそもAもないんですけど)ことを露呈させているとも言えるでしょう。

コンディションの整っていない選手を使わない、微妙な選手を早い時間帯に交代させる、戦術的な意図を持ったフォーメーション変更、プランB、など、監督として基本的に備えておくべき事項をランパードはクリアしていません。

 

・気迫の欠如

レスター戦ではマウントが1人気を吐いていました。今季は3試合に1回はそういう試合があります。アスピも衰えを隠せず、怪我がちのプリシッチも消化不良。昨季、プレーはともかく気迫、パッションの面で「孤軍奮闘」の代名詞だった2人がパッとしないせいもあり、プレーでチームを引っ張る選手がマウントしかいません。実質的なゲームキャプテンのチアゴシウバは味方を鼓舞するシーンもあり、彼自体は安定しています。しかし、控えも含めて独力で試合の雰囲気を変えられる選手がいないと、先制された後に重苦しい雰囲気が漂いがちです。

ここ最近は若手の台頭でポジティブな印象もあるバルセロナですが、寡黙なメッシがキャプテンであることによるパッションの欠如は課題で、昨今の大逆転負けの原因です。プジョルのように熱気のある選手、シャビのような絶対的な中盤のリーダーの不在は問題として頻繁に指摘されています。ラモス不在時のマドリーが勝てないのもそれが遠因と言われていますし、イブラというリーダーが牽引するミランの躍進はご存知の通り。チアゴシウバ以外にもピッチ上のリーダーは必要です。

 

・唯一の希望はマウント

チェルシーの唯一のポジティブ要素がメイソン・マウント。今季の試合では、目立ったボールロストをすることはほぼ無し。昨季に指摘された消える試合も無く、1試合に5回以上のチャンスクリエイトはザラです。

マウントの強みは縦への推進力、狭いスペースでの反転、ボールキープ力、素早くはたく判断力、パス精度、シュート精度、守備貢献、稼働率、メンタリティ、はっきり言うと、プレミアへの適応、コロナ感染によるコンディション不良云々を超えて、贔屓目なしにハヴァーツより上手く、チームで最も重要な選手です。彼がキャプテンマークを巻く日はそう遠くないでしょう。あれだけ酷い内容だったレスター戦でも、彼のスタッツは素晴らしいものでした。22歳にキャリーされている他の選手たちにも切実に奮起が求められます。

f:id:fujimaki304:20210120225737p:image

f:id:fujimaki304:20210121012339j:image

 

・自分のスタンス

僕はランパード解任は許容できます。ただ、大手を振って「解任しろ」とは言えません。彼は僕が初めてユニフォームを買ってもらった選手であり、チェルシーを好きになったきっかけであり、10年以上欧州サッカーを追い続けている理由を作った人です。彼がチェルシーの監督として掲げるトロフィーは、なによりも価値のあるものだと信じています。解任された場合、素直に受け入れるしかありませんが、クラブの英雄とこんな形で道を分つのは、あまりにも悲し過ぎます。彼は戦術的には無能かもしれませんが、カリスマがあり、勝者のメンタリティがあり、なにより、誰よりもチェルシーを好きでいてくれる人でもあります。今更どうすれば良いかも分かりませんが、とにかく彼をサポートする体制を整え、復調してほしいというのが切なる願いです。

シティ戦までは、「アブラモビッチ体制初の長期政権候補を、数試合負けが込んだくらいで解任なんてありえない」くらいに思っていました。しかし、レスター戦を終え、ここまで上積みがないと、解任したくなる人の声も冷静に受け止めなくてはならないとヒシヒシと感じるようになりました。全てはフロントの判断ですが、少なくとも1月中にはランパード全面サポートなのか、解任なのか、クラブ側から方向性を示してほしいと思ってます。

自分がランパード続投でいいと思うケースは、有能なアシスタントが付くこと、グラントやヒディンクラニエリのようなチェルシー御用達の元監督がサポートに入ってくれることにより、ランパードの弱点が補強される場合のみです。

よく聞かれるのが、「ペップ初年度のシティは良くなかったけど我慢した。クロップはCL優勝まで数年かけてチームを作った。モウスパーズが2年目に良くなった。だからチェルシーも我慢すべきだ。」というもの。ぶっちゃけ、彼らのような実績のある監督と違い、目指すべき方向性が定まらない、あるいは目指すべき方向に進んでも勝てるかどうかわからない中で我慢するのは無理です。例えば、「サッリボール」は初年度の終盤、特にEL決勝ではかなり形になっていました。しかし、サッリ自体の頑固さや、メンバー固定などの問題点を加味すると、恐らく「劣化ペップシティ」になる気がした、というのは自分だけでしょうか。ランパードが今のまま5年やり続けても、結果が出るとは限りません。少なくとも、「監督ランパード、副官モリス体制」では、これ以上の向上は期待できないと思っています。

 

・試合時間について

もう一つ、今季のチェルサポのモチベーションを下げている問題として、試合時間が悪いというものがあります。日本時間2〜5時開催という試合が昨季と比べて極端に多く、23時、0時開催の優しい試合がほとんどありません。早起きして見て、負ける。これがチェルシーサポーターを萎えさせている原因でしょう。勝っていた時期でさえ、リアタイしているサポが昨季より減っていたような気がしていました。しかし、辛い時こそ応援するのがサポーター。暴言は批判に、批判はポジティブな改善策に変えて発信する意識は、自分を含めて持った方がいいのかなと思いました。

f:id:fujimaki304:20210121012016p:image

いやでも、こんだけキツい試合見せられて、仕事や学校に行くのは厳しいですよ…本当に。

 

・最後に

こんな記事を最後まで読んでくれてありがとうございます。例えば、ヴェルナーやマウント、ランパードらに関する考え方は完全に主観です。これは違うだろっていう意見などはリプやコメントで是非お待ちしています。

レスター戦の時には書きたいことが山ほどあったのですが、感情的にぶわーっと文字に起こしたら何を書いて、何を書いていないかもわからなくなってしまいました。思いついたら追加していきます。

 

 

プレミアリーグ事件簿

今回は過去にプレミアリーグで起こった事件10選を紹介します。ファンの間ではよくネタにされることも、最近見始めた人には馴染みがないかもしれません。軽いものから大事件まで、気になった事件は調べてみてください。

 

 

1. カントナのカンフーキック(1995年)

f:id:fujimaki304:20201003154307j:image

1995年1月25日のクリスタルパレスとの一戦でユナイテッドの「キング」エリック・カントナが退場になると、去り際にヤジを飛ばした相手サポーターへカンフーキックを見舞わせた。FAから8ヶ月の出場停止処分が下り、仏代表キャプテンも剥奪。エースを失ったチームは2位でシーズンを終えた。

しかし、翌年に処分が明けると、ブランクを感じさせない活躍でリーグ優勝に貢献。さらに96/97には2連覇を果たし、30歳で現役を引退した。シーズンで50試合15ゴールを決めての引退はファンにとっては衝撃となった。

 

2. ロイ・キーン、悪魔の報復(2001年)

f:id:fujimaki304:20201003160330j:image

2001年4月21日のマンチェスターダービーにて、1997年の対戦時に自分を負傷させたことのあるアルフ・インゲ・ホーランに対し、ロイ・キーンは膝にスパイクを入れて報復。さらに、倒れ込む相手に罵声を浴びせた。

この怪我の影響で90分間のプレーが難しくなったホーランは2年後に31歳の若さで現役を退いた。今、飛ぶ鳥を落とす勢いの「怪物」ホーランの父親でもある。

https://www.youtube.com/watch?v=6nGkafx3-Ks

 

3. スアレス噛みつき事件(2013年)

f:id:fujimaki304:20201003160833j:image

2013年4月21日のチェルシー戦で、リバプールルイス・スアレスイバノビッチに噛みついた事件。実は初めてではなく、アヤックス時代にも噛みつきで退場になっており、この時は再犯。10試合の出場停止となるが、さらに翌年のW杯でもキエッリーニに噛みついて4ヶ月の出場停止となった。

ガーナ戦のハンド事件や奥さんとの一途な愛など、プレー以外でも話題に事欠かない男である。

https://www.youtube.com/watch?v=s4aYvyEjX4U

 

4. ショウクロス、涙の退場(2010年)

f:id:fujimaki304:20201003161508j:image

2010年2月27日のストークvsアーセナルの一戦で、ライアン・ショウクロスのタックルがアーロン・ラムジーの右足首に直撃。足が曲がってはいけない方向に曲がってしまう悲惨な光景を目の当たりにした選手たちは頭を抱えた。

アーセナルの選手は審判とショウクロスに詰め寄るが、心を痛めた彼は提示された赤のカードに従って涙を流しながらピッチを去った。彼のファウル後の態度や試合後の謝罪の言葉は非常に真摯なものであり、不慮の事故だとしてアーセナルサポーターからも同情の声が集まった。

https://youtu.be/cDoxP4jjt_M

 

5. パーデューのフラグ建築ダンス(2016年)

f:id:fujimaki304:20201003163045j:image

2016年5月21に行われたFA杯決勝。78分にパンチョンのゴールで先制したクリスタルパレスの監督、アラン・パーデューが謎のダンスを披露した。

しかし、81分にユナイテッドのファン・マタに決められて追い付かれると、延長で宇宙最高クラブユース出身の逸材ジェシー・リンガードに決勝点を許して逆転負け。「フラグ」だったとして各所でいじられることになった。海外サポのリプ欄では頻繁にGIFを見かけるが、日本では放映権の関係か、あまり覚えられていない一件である。

https://youtu.be/-LvKwea4cIs

 

6. レッドカード対象誤認事件(2014年)

f:id:fujimaki304:20201003164206j:image

2014年3月24日のビッグロンドンダービーで、開始15分にエデン・アザールのシュートを故意のハンドでブロックしたオックスレイド=チェンバレンが退場、かと思いきや、チームメイトのキーラン・ギブスにレッドカードが提示された。

なんと、主審のアンドレ・マリナーが退場処分にする相手を間違えてしまったのだ。チェンバレンは「Ref, it was me.」と主張するも、判定は変わらず。試合はチェルシーが3-0で勝利。2日後に、FAからギブスの処分取り消しがアナウンスされ、マリナーは誤審だとして謝罪した。

VAR介入の4つの条件に「カードを出す対象を間違えた場合」が含まれているのには、この事件の影響が少なからずあったと思われる。

チェンバレンリバプール移籍の際には、公式Twitterに「ギブスと間違えてないよな?」という趣旨のリプライが殺到した。

https://youtu.be/MDogtWutIrQ

 

7. ピアニスト事件(2018年)

f:id:fujimaki304:20201003165431j:image

17/18シーズン冬の移籍市場を賑わせたアレクシス・サンチェスヘンリク・ムヒタリアンのビッグトレードは1月22日に決着。ユナイテッド公式による獲得発表で、サンチェスはピアニストとして「夢の劇場」に降り立った。

しかし、伝統の7番を背負った大物は全く奮わず。翌年追われるようにインテルへ出向。プレミアでも5本の指に入るアタッカーだったサンチェスが、ユナイテッドでの公式戦45試合でわずか5ゴールという鳴かず飛ばずの成績で終わったのは衝撃であり、これ以降、公式発表でピアノを弾く演出は避けられるようになった。

今夏チェルシーに来たハフェルツもピアノを弾けるらしく、彼の犠牲者の1人である。ぶっちゃけ、他サポなので何度見ても滑稽過ぎて笑える。

https://youtu.be/CCk30hIr1Sw

 

8. ビーチボールゴール(2009年)

f:id:fujimaki304:20201003172035j:image

2019年10月17日のサンダーランドvsリバプールの一戦で、ダレン・ベントが放ったシュートが観客の投げ込んだビーチボールに当たり、軌道が変わってゴールに吸い込まれた事件。

この珍事には歴戦のGKマヌエル・レイナも、流石に反応できず。公式ルールに則るとゴールは無効となり、ドロップボールで試合再開となるはずだが、なんと主審はゴールを認めてしまった。

このボールはアウェイに駆けつけたゴール裏のKOPが投げ込んだものらしく、自業自得とも言える。この1点によりサンダーランドが1-0で勝利を収めたこともあり、当時はかなり話題になった。

https://youtu.be/FUvHP-d03Bo

 

9. 「彼は失敗のスペシャリストだ。」(2014年)

f:id:fujimaki304:20201003172437j:image

現在All Or Nothingで話題のジョゼ・モウリーニョチェルシー監督時代、2014年バレンタインデーの記者会見でアーセン・ベンゲルに向けて放った名言。「私がチェルシーで8年間も無冠だったなら、即クラブを去って二度と戻ってこない」と続けた。

首位チェルシーと2位のアーセナルが1ポイント差という状況で、「彼は失敗を恐れている」とベンゲルが発言したことに応戦した形。結局このシーズンはチェルシーが優勝した。

しかし、ベンゲルの引退に際してはモウリーニョアレックス・ファーガソンと共に笑顔で労いに訪れた。プライドの高い彼だからこそ出た名言であるが、心の中では無敗優勝も成し遂げた名監督をリスペクトしているのだろう。

https://youtu.be/fwM4Ip24PyI

 

10. アデバヨール全力疾走(2009年)

f:id:fujimaki304:20201003174152j:image

2009年9月12日、アーセナルからシティへの移籍直後の対戦で決勝点を決めたエマニュエル・アデバヨールが、ピッチを縦断して反対側のゴール裏に構える古巣サポを煽りに行った事件。

「裏切り者」とスタンドから言われ続けたことにイライラしていたせいか、この試合中の彼のスプリントよりも速いスピードを記録らしい。「最高で最悪」のパフォーマンスとしてこれからも語り継がれていくだろう。

https://youtu.be/liV3LwrLOZU

 

 

 

まだまだたくさんあるので気が向いたらまた作ります。それでは。

サッカー英語表現の解説

プレミアリーグを中心とした英語による実況や記事、SNS上で使われる表現を解説します。間違いがあればコメント等で指摘していただけると嬉しいです。

 

f:id:fujimaki304:20200629185113p:image

 

・Premiership:プレミアリーグ

昔は実況でもこっちで呼ばれていたので年配の方はよくプレミアシップと言う。ちなみにラグビー一部リーグはPremiership Rugbyが正式名称。

 

 

 

・Fair play to 〜:公正な評価を下す

言いたかないけど、というニュアンスが含まれる。ライバルクラブを称賛するときや、普段微妙な選手の好プレー対して使う。

ex.) Fair play to Liverpool, they have been brilliant this season. 

今年のリバポは凄かったと言わざるを得ないね。

 

ex.2) Fair play. It wasn't a bad delivery from Willian.

今のウィリアンのコーナーはまあ悪くはなかったな。

 

 

 

・Center half :センターバック

昔は守備的なMF、現在はCBを指す。

 

 

 

・Full back:サイドバック

向こうでもSBと略されるが、英語だとside backよりfull backの方が言いやすいのでこっちが主流。

 

 

 

・Holding midfielder

中盤の低い位置を支配し、ボールを持てる選手を指す。英語でDMFはただのポジションを表し、役割によって名称が細分化される。最近では英国でもアンカーや、レジスタという言葉が浸透しているため区別される。

インテンシティの高いプレミアでは、ファンからは最も重要視されるポジションで、ポジショニング、キープ力、配球力が高レベルで求めらる。

 

DMF

・Defensive role:Kante, Thomas Partey

・Anchor:Fabinho, Busquets

・Holding mid:Cazorla, Kovacic, Verratti

・Regista:Jorginho, Pjanic

 

f:id:fujimaki304:20200629185620j:image

 

 

・Headline:見出し

新聞の一面になるようなビッグプレーが生まれたときに使う。

15-16ニューカッスル戦での岡崎のバイシクルは各社で一面を飾った。

f:id:fujimaki304:20200629185803j:image

 

ex.) The headline has been written.

明日の1面は決まった。

(CLバルサ戦、トーレスの得点後の実況から)

 

ex.2) If he scores another, it will be the headline.

彼があと1点取れば見出しになるね。

 

 

 

・Out of context:意味がわからない

本来は文脈がないという意味だが、砕けた表現で意味不明的なニュアンスがある。

どちらかといえば衝撃的に酷いシーンや、呆れてしまうときに使う。

ex.) That penalty was out of context.

なんて酷いPKだ…。

 

Out of Context Arsenalというアーセナルの呆れてしまうようなシーンを投稿するアカウントがバズって以降、各チームや選手のOut of context ○○という類似アカウントが増産された。

https://twitter.com/outofcontextars

 

 

 

・Manager:監督

先日のサッカーキングの動画で、スペインでは代表監督とクラブの監督が違う名称で呼ばれている、ということを小澤さんと倉敷さんが語っていた。英国では

ではどちらもManagerで、アシスタントコーチはHead coach。これはラグビーだと監督の意味で使う。

 

 

 

・Woodwork:枠(ポスト、クロスバー)

昔は木のゴールを使っていた名残。CrossbarとPostも普通に使うが、それらをまとめたり、どちらに当たったか微妙だったりすると使われる。

ex.) Our best defender was the woodwork last night.

昨夜の試合はDFより枠の方が仕事してたな。

 

 

 

・Delivery:配球、ボール運び

セットプレーのボールや、ロングパスなどを指す。長い距離を運ぶドリブルにも使う。

ex.) What a delivery from Kevin De Bruyne.

デブライネのボールえぐ過ぎわろた。

 

 

 

・Punishment:代償、ツケを払う

本来は罰という言葉だが、代償という意味で使われる。チャンスを作り続けるも決められない展開の後には大体これが待っている。

ex.) We missed too much chances in the first half which costed us that punishment.

前半に外しまくったツケを払わされたな。

 

 

 

Come on! = Vamos! :よっしゃー!

ゴール後やキックオフ前などに選手が叫ぶ言葉。スペイン語圏の選手はVamos。どちらも行くぞっていう意味です。

 

 

 

・Box:ペナルティエリア内、ゴール前

ex.) He's crucial in the box.

彼はゴール前で決定的な仕事をする。

 

 

 

・Match-winner:決勝点

 

 

 

・Breakthrough:均衡を破るゴール

○○ with the breakthroughという構文で使われます。

ex.) Pulisic with the breakthrough.

 

 

 

・Pulls the trigger:シュートを打つ

銃の引き金を引くという意味。転じて、主にミドルシュートを放ったことに対して使われる。"Test GK名" でも使われます。

ex.) He pulled the trigger to test Allison.

アリソンを試すようなミドルを打ちました。

 

 

 

またなんか思いついたらやります。

それでは。