第9節 vsマン・ユナイテッド(H)
試合結果
リュディガー 21' マルシャル 55'
バークリー 96' マルシャル 73'
代表ウィークが明け、開幕から不調のユナイテッドをホームに迎えたチェルシー。 ビッグ6では今一番勝ち点を取りやすい相手だけに勝ち点3が期待されました。しかし結果的にはモウリーニョ率いるユナイテッドの戦術にしてやられアディショナルタイムに追いつくのがやっと。内容としてもかなり改善点の多いものになりました。
ファンとしてはマタにやられ、モウリーニョにやられ、しかもいつものようなリズム感のあるパス回しも見られず非常にストレスフルな試合だったことでしょう。僕もそうでした。なので今回に関してはかなり辛辣にレビューしてます。
選手評価
ケパ 5.5
アスピリクエタ 6
リュディガー 6.5
ダビド・ルイス 6
アロンソ 4.5
カンテ 5.5
ジョルジーニョ 5.5
コバチッチ 6.5 → バークリー 7
ウィリアン 6 → ペドロ 6
モラタ 5 → ジルー 6.5
アザール 6
マウリツィオ・サッリ 5
MOM ロス・バークリー
ケパ 5.5
1失点目の直前のセーブは良かったが、結果としては2失点を喫した
アスピリクエタ 6
寄せの速さでピンチを未然に防ぐプレーも多かったが、攻撃の面で脅威になれず。土壇場で上げたクロスは素晴らしかった。
リュディガー 6.5
完璧なCKから先制点を叩き込み、2点目にも関与したが、1失点目はボールウォッチャーになってしまった。
ダビド・ルイス 6
前節に続くモフモフスクリーンで間接的に先制点をアシスト。それ以外でも手詰まりの攻撃にアクセントをつけようとしていたが、左サイドの穴をカバーしきれなかった。
アロンソ 4.5
今日のパフォーマンスはおそらく今季最悪。プレーの精度然り、守備面然り。トラップミスしていなければデヘアと1対1だったシーンも。左サイドは完全にモウリーニョに狙われてしまった。
カンテ 5.5
印象的なボール奪取は2回くらい。惜しいミドルもあったが、パスのリズムが悪く、サイドに流れてもクロスを上げられないなど攻撃面でブレーキに。
ジョルジーニョ 5.5
守備面ではかなりインターセプトをしていたが、中盤とルカクにCBやIHからのパスコースを切られ、マタのマンマークでほぼ仕事ができず。オープンな展開になった終盤を除いてボールを触る機会が少なかった。
コバチッチ 6.5
アザールが真ん中に流れ、アロンソがヤングをピン留めした時にはいい持ち上がりを見せていたがシュートまではいけず。この日のチームの中では悪くはなかった。
ウィリアン 6
セットプレー以外ではほぼ印象なし。しかも最初のFK枠外だし。チャンスの少なさを懸念し、セットプレーのキッカーとして起用されていたならばその役割は果たしたと言える。
モラタ 5
流石に擁護できないパフォーマンス。最初の60分もジルーだったら…と思ってしまう。個人として脅威にもなれず、周りとの連携もイマイチ。パスをはたいた後の動き出しも遅い。しかも周りが見えてなさすぎてプレーの判断が悪い。戦犯とまでは言えないが攻撃が停滞した大きな要因の一人。
アザール 6
ヤングにマークされ、彼が出てきても裏はCBにケアされていたため自由はほぼ無し。かなりイライラしていたが、守備へかなり貢献していた。ラシュフォードをイエローで潰しに行ったシーンを見て、キャプテンマークを巻いてほしいと思った。
バークリー 7
90+6分での同点ゴール。コバチッチとバークリーの競争はお互いに高め合っているようで凄く良い。今日のチームの出来なら彼とリュディガー 以外にMOM候補はいない。
ペドロ 6
ウィリアンよりもパス出しのテンポが良く、右サイドでパスが少し回るようになった。
ジルー 6.5
出てきてすぐのアザールとのパス交換を、モラタにはできますか? というだけでジルーを起用する理由は十分。ペドロのクロスに惜しくも合わせられなかったが、クロスに飛び込むシーンも無かったモラタと比較したら雲泥の差。
マウリツィオ・サッリ 5
先制点は彼の緻密なセットプレー研究の成果。完全に意図的にリュディガーをフリーにさせた。ただ、選手起用に関してはジルー、ペドロを先発から使った方が良かったと感じた。モウリーニョの左狙いは前半からはっきりしていただけに、改善できなかったのは痛い。
感想
自分が監督なら…というのは誰もが考えることですが、この試合に関しては噛み合っていない歯車を最後まで直せなかった印象があるので、僭越ながら書きたいと思います。
ですがその前にまず前提としてユナイテッドの戦術についておさらいします。
ユナイテッドは4-2-3-1。チェルシーは4-3-3なので、守備に関しては4人のDFで3人のアタッカーを見ます。中盤3人で3人を見て、両SHはSBにつき、1トップのルカクがCBの2人にプレスをかけます。つまり、お互いのCBとCF以外はほぼマンマークのような形になります。
攻撃に関してはカウンター狙い。アロンソの裏をひたすらラシュフォードに走らせ、そこにマタが絡みルカクが中で待ちます。マルシャルはアスピとの一対一が狙いでしたが、チェルシーは左サイドが脆いので攻撃はほぼそちらからでした。
(Leo the football TV https://m.youtube.com/channel/UCmsfo6_GmedEhParaNa3r9A さんから)
チェルシーがボールを持った時は画像のとおり、ユナイテッドはほぼマンマークになります。ここからお互いの強み、弱みが顔を出します。チェルシーのCB2人はボールを持った時にスペースがあれば持ち運べるスキルがあります。そのためルカクがどれだけ必死にプレスに行っても、他がチェルシーの選手をマンマークしている限りルイスやリュディガーがボールを運ぶことができます。特にルイスが持ち上がった後のチェルシーの左サイドではそこからコバチッチやアザール、アロンソが絡むことで少しずつ敵の守備にズレが生じていきます。これがチェルシーの攻め筋でした。
一方で、モラタに対してはCB2人が余ります。モラタが脅威ではないためリンデレフが付き、スモーリングはアザールのマークにつくヤングのフォローに力を割くことができます。そのためチェルシーの頼みの綱であるアザールは仕掛ける時に2人を相手にすることになり中々仕事ができません。
不快に思う人がいるのも承知で言うと、極端な例ですがモラタが例えばハリー・ケインやルイス・スアレスなら、リンデレフ1人で見るのは無理なのでスモーリングもケアすることになり、アザールに対してCBとSBの2人で対応することはできなくなります。CFが脅威になれるかどうかは他のプレーヤーに余裕を与えるためにも非常に重要になります。
この試合ではモラタやアザールのところでロスト→ラシュフォードに渡りカウンターという場面がとても多かったです。ラシュフォードは守備時にはアロンソについているのでスタート地点は同じです。しかし出足の速さが圧倒的に優れています。また攻撃が仕事の選手は多くの場合、攻撃→守備の切り替え よりも守備→攻撃の切り替え の方が得意なのでラシュフォードに裏を取られてしまいます。そして抜かれたアロンソのフォローがルイスというのもチェルシーの問題点です。ルイスは基本的にインターセプトやトラップ時の寄せの速さでボールを奪うCBです。いわゆる先手必勝型。スピードのある選手に加速された時の対応は並なので、ラシュフォードとの対面でかなり不利になっていました。
そして単純にして最大のチェルシーの弱点はクロスへの対応です。特にセカンドボールが回収できず二度、三度と連続で上げられるとボールウォッチャーやセルフジャッジによるプレーの停止が多発します。
1点目はまさにその形。ちなみに昨季のオールドトラフォードのゲームでもセルフジャッジからルカクに決められています。
これを踏まえて僕の回答は3バックです。
アロンソを上げ、アスピを完全に下げた実質的な3バックの形にするのが適切だったと思います。
○ ○ ○
○ ○ ○ ○
○ ○ ○
○
右のMFにカンテを起用するなら攻撃時はこのような歪な3-4-3の形にし、3CBは左からリュディガー、ルイス、アスピという構成が良かったと思います。チェルシーに対して左SBの裏を狙うのはいわば定石になりつつあるので、モウリーニョがそこを突いてこないはずはない。試合前からこの形にし1番ディフェンス能力の高いリュディガーに左を任せるのがベストなはずです。アスピリクエタを下げておくことで右に関してはマルシャルに裏を取られることはないでしょう。彼は動き出しやポジショニングは並で空中戦もないので一対一ならアスピは完封できるはずです。
また、攻撃に関しても左右ののCBから縦パスを入れやすくなり、アスピのアーリークロスも活かせるようになります。それを考えても考えずとも、CFにはジルーを起用すべきでしょう。CBの枚数が増えたことでジョルジーニョが少し前でプレーすることができ、ジルーの落としを受けるくらいまでポジションを上げられます。これにより攻撃面も改善が見込めます。
これがこの試合で3バックを採用すべきだった理由です。
しかしサッリが突然3バックを使うのは考えにくいので、現実的には後半からカンテとウィリアンをセスクとペドロに変えるのが最適解だったと思います。ペドロは運動量があり守備もできますし、何より裏を狙う動き出しの回数が多いのが強みです。ジョルジーニョがマークされてボールの循環役がいない状態で、カンテがボールを持ってもできることは多くありません。セスクを起用することによりある程度ボールが回り、なおかつサイドチェンジや裏へのボール供給が増えることで相手の守備に綻びを生むことができたのではないでしょうか。
16/17に優勝したコンテの3-4-3に最初に解を提示したのはおそらくモウリーニョでした。(その前にスパーズに完敗したが、それはWBの質の差で圧倒するというもので他チームには実践不可能だった。) その解とはエレーラによるアザールのマンマーク。その試合でエレーラはその仕事をこなしつつ1G1Aと大活躍しました。この試合のマタと重なりますよね。
僕はこの試合、完全にモウリーニョにやられたと思いました。そして放出候補だったマルシャルが2ゴール。ウイングからコンバートされたヤングがアザールを完封。モウリーニョは終わった監督だ、解任すべきだという声が多いですが自分はまだまだ彼は一流の監督だと思っています。
ユナイテッドファンかよという声が聞こえてきそうですが、今日の采配はサッリの脆さが見えたと思ったので書きました。4-3-3、メンバー固定で左主攻、それ一辺倒のサッカーで優勝できるほどプレミアは甘くありません。優勝してなお3-5-2を取り入れたコンテ、3バックと4バックの併用で圧勝したペップがそれを物語っているのではないでしょうか。
サッリの描くサッカーは美しく、守備が改善されれば強さも併せ持つでしょう。しかし柔軟さ、戦術の幅は明らかな課題です。現地のファンが「まだ優勝を考えるのは早い」と言っていましたが、その通りでしょう。これからどれだけ引き出しを増やせるか、長期政権に向けても重要になってくるはずです。
ただ、純粋なファンとして、負けなくてよかった。最後まで諦めなかったルイス、リュディガー 、バークリーまじでありがとう。それだけは言いたいと思います。