Blues' notes

ロンドンの青いフットボールクラブ、チェルシーの試合やニュースについて思うままに書いてます

チェルシーの現状整理

日本時間で4/28(水)4:00キックオフの大一番、CL準決勝1stLegレアル・マドリーvsチェルシーを前に、主にマドリディスタや他サポ向けにチェルシーの現状整理をさせていただきたいと思います。

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33節を終え、国内リーグでのチェルシーの暫定順位は4位。ウェストハムとの直接対決で競り勝ったことで、CL圏獲得へ大きく前進しました。

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【ここまでのチェルシー

現状を正確に伝えるには、ランパード監督が就任した19/20シーズンからの動きを線で振り返る必要があります。

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昨季は若手がブレイクし、ベテランとの融合によってCL圏内の4位に滑り込みましたが、バイエルンとのCLベスト16、FA杯決勝のアーセナル戦に敗れて無冠に終わりました。

100点の結果ではありませんでしたが、ドタバタ就任とアザールの移籍、補強禁止処分を考慮すれば望外の好成績。夏に大量補強を敢行し、今年は躍進に期待できるという雰囲気がサポーターの間には広がっていました。

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迎えた20/21シーズン。2節でリバプールに敗れはしたものの、その後は堅守とセットプレーの強さを武器に11月までは勝点を積み重ねます。チアゴ・シウバ、チルウェル、ジエシュなど、試合を追うごとに新加入選手がフィットし始めたことで一時は優勝候補扱いされた程。

しかし、昨季からの課題として残っていたカウンターへの脆さ、引かれた時の得点力、オープンな展開に引き込まれやすい点などが改善されず、12月はエバートン、ウルブズ、アーセナルに敗北。

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戦術的にも個々のパフォーマンスでも「完敗」を喫したレスター戦が決定打となり、ランパードが解任され、後任はトゥヘルという形になります。

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トゥヘルは就任から2日後のウルブズ戦でいきなり3バックを採用。以降、現在までのチェルシーの基本フォーメーションは3-4-2-1となっています。

さらに前政権で干されていたアロンソ、リュディガー、クリステンセンらを重用し、ハドソン=オドイを右WBに置くなど、選手の特徴から最適な配置を導き出す慧眼を発揮。

ポジショニングや役割が整理されたことで試合終盤までオープンな展開にならず、鉄壁のディフェンスを武器に上昇気流に乗せます。素早いトランジションの徹底やハーフスペースへの走り込みなど、現代サッカーで重要視される基本的な戦術もトゥヘルはすぐに落とし込みました。

 

代表ウィーク明けランチタイムKOという最悪なコンディションで大敗したWBA戦を除けば13試合でわずか3失点。

CLではアトレティコを2試合とも完封し、ポルト戦も2ndLegのATまではゴールを許しませんでした。その反面、得点力には課題が残りますが、1-0でビッグマッチを制する様はまさにスタンフォード・ブリッジが要塞と言われた頃を思い出させる「堅守のチェルシー」と言えるでしょう。

 

 

【躍進を支えている選手たち】

まずはチェルシーの王、メイソン・マウント。

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今季のチェルシーのMVPはほぼ確定。信じられないスピードでワールドクラスへの階段を登っています。昨季終盤から課題だった「消えてしまう」現象が改善され、今はドリブル、パス、シュート、守備能力などあらゆる能力値がカンストのオールラウンダーに。

特筆すべきは一瞬で相手を剥がすターンと、ファウルを受けても止まらない推進力。

ポルト戦のゴールや、アトレティコ戦で複数選手のタックルをものともせずに運んだシーンに象徴されます。

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これだけ高額選手を補強したチェルシーで、誰が見ても1番上手いだけでなく、怪我せず、メンタリティもプロ意識も高い彼は、マドリディスタや他リーグのファンにも知ってほしい逸材です。

 

次にコバチッチ。マドリーから来たこの男は昨季にブレイクスルーを果たし、今季は化け物じみた突破力とプレス回避能力でマウントに次いで安定したパフォーマンスを見せています。

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彼と共に中盤を支えるのがジョルジーニョソン・フンミンにズタズタに切り裂かれたスパーズ戦あたりで時が止まっている人は彼の評価が未だに上がりきらないかもしれません。

しかしトゥヘルが、彼の短所が目立たないようにコンパクトな陣形を維持するようチームに浸透させたことで輝きを放ちました。今は被カウンター時を除けば中盤を支配する絶対的な軸となっています。

 

個人技ありきだったビルドアップも、動きやポジショニングが整理されたことでパスコースが増えて安定し、2ボランチのプレス回避能力とボール回収が目立つ結果に。

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ここにお馴染みのカンテを加えた3人の中盤が当たり前のようにこぼれ球を拾い続け、ボールキープをすることでポゼッション率を担保しています。

 

攻撃面で違いを生むのはヴェルナー。決定力にはお世辞にも満足できませんが、アトレティコやシティを沈めたカウンターの鋭さは、接戦での勝利が多いチェルシーの重要な得点パターンです。

単純にアバウトなロングボールを追いかけてくれたり、GKまでプレスを掛けてくれるだけでも仕事はできるので、トゥヘルはヴェルナーが微妙な時でも滅多に交代させません。

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最近は無理に降りてゲームメイクに関わろうとするシーンが減り、ポストプレーも徐々に身につけ始めました。ゴールとアシストを共に2桁に乗せ、PK奪取も7回と大貢献。怪我なしでここまで来ている彼はマウントと並ぶ攻撃の要です。

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逆に、他のアタッカー陣はシーズン通してみると及第点以下。

ジエシュはムラがあり、ハヴァーツはプレー強度が高い試合では球際で競り勝てません。プリシッチは「調子が上がる→怪我→低調→…」のサイクルを繰り返しており、昨季のFA杯決勝での負傷交代を見れば分かる通り、起用にはリスクがあります。

何よりもスコアレスドローの多さが、決定力不足と守備の堅さを同時に示していると言えるでしょう。

 

 

【勝負を分ける中盤の質

強力な個人技を持つ選手たちを並べてポゼッションを行い、「攻められる時間の少なさ」「プレス回避能力」「精度の高いカウンター」を強みに「ウノゼロ」勝利を狙えるのがチェルシーの強みと言えるでしょう。ただ、それはマドリーの強みでもあるかもしれません。個の局面で差が出る試合になる気がしています。

個人的に勝負を分けると思っているのが、試合の主導権争いに直結する中盤のクオリティ。それだけにコバチッチ欠場は痛手ですが、マドリー側もコロナ陽性反応や怪我など不運に見舞われている印象なので文句は言えません。むしろこの段階で主力がほぼ揃っていることは奇跡に近いと思っています。

ですが、やはり相手の狙い目となるカンテのプレス回避、ジョルジーニョのスピードの無さを補えるコバチッチの不在は大きい。モドリッチ、カゼミーロ、クロースにバルベルデを加えた中盤は間違いなく"世界屈指"です。国内では個人技やサッカーセンスの差を見せつけているジョルジーニョやカンテが、CL三連覇メンバーを相手にどこまでやれるのか。また、明確な弱点と長所を持つ彼らをどれだけ周りがサポートできるか、あるいは不利と感じた時に中盤を省略した形で攻撃できるかが勝負のポイントになるでしょう。

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例のツイート通り、チェルシーの中盤が"世界屈指"だと証明してほしいです笑

 

 

【予想スタメンと試合の展望】

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これが現状のベストメンバーになります(Azpilicuetaのスペルはミスです)。絶対領域となっているのはメンディ、アスピリクエタ、チルウェル、マウントでしょうか。

 

GKはメンディで確定です。ケパも調子を上げていますが、トゥヘルはメンディの序列が上だと明言しています。彼は飛び出しの判断に課題がありますが、チアゴ・シウバやクリステンセンの落ち着いたプレーもあって露呈するシーンは少ないです。なぜか他サポやメディアの評価がイマイチ高くないんですが、守備範囲や反応速度は折り紙つき。ミドルはほぼ入りません。

 

続いてDF陣。右CBのアスピリクエタキャプテンシーやミスの少なさ、対人守備力を考えれば絶対的な存在です。チアゴ・シウバは怪我が多いですが、健康体ならスタメンに名を連ねます。絶対にマイボールにする守備の技術やロングフィードは未だ健在です。

彼の代わりができるまでに成長したクリステンセンとどちらが出場するかは、コンディションによると思います。トゥヘルの元で完全復活を果たしたフィジカル系CBのリュディガーは、左CBの不動のレギュラーと言っても過言ではありません。

ランパードに重用されたズマは集中力散漫なプレーやミスが目立ち、ロストしたのに全力で戻らない姿がSNSで糾弾されるなど序列を落としています。

直近の試合でアスピリクエタが右WBで出場したことで3CBのメンツは読みづらいですが、マドリー戦では左からリュディガー、チアゴ・シウバアスピリクエタで来ると予想されます。

 

中盤ですが、コバチッチが怪我で出られない1stLegはジョルジーニョとカンテの2ボランチになるでしょう。カンテは首振りの回数や視野の広さが他の2人に劣り、パススピードも遅いためビルドアップでは狙い目とされるかもしれません。ただ、本調子ならお釣りがくるくらいのボール奪取と運動量があるため、どれだけビルドアップの局面で彼をサポートできるかが鍵になりそうです。

 

左WBはチルウェルで確定と見て良いでしょう。最近は新しい役割に慣れ始め、上がるタイミングや裏へのスルーパスなどで違いを作れるようになっています。アロンソも一時期は好調でしたが、チルウェルがそれを上回る活躍を見せてレギュラーを掴んでいるのが現状です。

問題は右WB。ウェストハムとの大一番でアスピリクエタが起用されたように、ジェームズにもオドイにも課題があります。ジェームズはクロス精度とフィジカルが売りのSBですが、独力の打開力がありません。

本来は生粋のドリブラーであるオドイは、守備面が流石に本職SBに劣ります。個人的には対人守備能力を考えてジェームズを起用し、得点が欲しい時間にオドイ投入が本線です。

 

3トップはマウントが確定。ヴェルナー、ジエシュ、プリシッチ、ハヴァーツの4人の中からもう2人を選ぶ形になるでしょう。エイブラハムとジルーは干され気味です。カウンターを狙うことになるビッグマッチではヴェルナーが先発するので、問題はもう1枠でしょう。

トゥヘルはプリシッチをスーパーサブとして起用したいと思っている節があるので、恐らくジエシュかハヴァーツ。強豪相手との結果を見れば、アトレティコ戦、シティ戦でヴェルナーとの連係から得点を挙げているジエシュが選ばれる気がします。

 

【結論】

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ということで僕の予想スタメンはこんな感じです。

 

ここで、チェルシーの基本戦術について説明します。

ボール保持時は幅を取ってボールを動かしながらマウントやジエシュがスペースで受けてチャンスメイク。非保持時はブロックを作って守り、適度に前から圧をかけてロングボールを蹴らせて回収、あるいはリトリートして引き込んでカウンターという形になります。

メンディやチアゴシウバ含めてセットプレーへの対応は素晴らしく、逆に最近はズマの控え降格もあってCKから点が取れていないので、セットプレーは勝敗に絡まない気がします。

マドリーは「大人なチーム」という印象ですが、チェルシーもそうなりつつあります。堅実にリスクを冒さず点を取り、ボールを保持して時計を進めながらリードを守り抜くことを目指す試合なると思います。

アトレティコ戦もポルト戦も、そのような展開から終盤に追加点を取れたことが勝利につながりましたが、マドリーがそんな隙を見せてくれるかは分かりません。とにかく少ないチャンスを決め切れるかというチェルシーの喫緊の課題を、この大一番で払拭してもらわねばなりません。

 

 

【古巣対戦の選手について】

コバチッチは1stLeg欠場が確定です。

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彼の成長した姿を見てほしかった気持ちがあり、コバチッチ自身も親友のモドリッチとの対戦で、高い壁を超えたいという思いもあったでしょう。非常に残念です。

 

次にクルトワ。僕はそこまで嫌いじゃありません。彼、口がよく動くんですが、毎試合ゴール裏の子どもにユニフォームあげたりとか、チャントに拍手送ったりとか、良い面も見てきたんですよね。

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何やり股以外の守備範囲は素晴らしかったし、間違いなく16/17の優勝に貢献してくれたことには感謝しています。まあ畜生であることには変わりないんですけど笑

 

最後にアザールスタンフォード・ブリッジで迎える2ndLegに出場してほしい。この1点に尽きます。夢を叶えたはずの彼が苦しんでいる姿を見るのはこちらとしても悲しい。とにかく健康体で彼のホームだった場所に帰ってきてほしいです。

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親友であるアスピリクエタとのマッチアップは想像するだけで目が潤みます。アザールハットトリックするなら負けてもいいや、と思うチェルサポが相当な数いるくらい、彼はみんなのアイドルであり英雄でした。

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本来なら万雷の拍手とチャントで迎え入れたいところ。ファンがいないスタジアムでの再会は切ないですが、ピッチで躍動する彼の姿を目に焼き付けたいと思います。

 

 

スーパーリーグ騒動の影響は?】

さて、最後にスーパーリーグについて。報道への動揺と疲れがあからさまに見えたブライトン戦は低調な試合となりましたが、事態がすぐに収束(?)したことで直近の試合は影響を感じさせませんでした。

トゥヘルも、「選手たちはもうスーパーリーグの話をしていない」と語り、依然としてペレス会長の処遇などに揺れるマドリーに比べれば吹いている風は弱いのかなと思います。

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逆にチェルシーはいち早く脱退に舵を切り、不満を全力で表明したサポーターとの溝もアドバイザーであるチェフの尽力や、アブラモビッチオーナーの釈明文によって深まらずに済みました。一時はマドリー、チェルシー共にCLから除外かと言われた中で、しっかりと事態が収まり、純粋なフットボールの試合ができることが何やり嬉しいです。

 

以上、チェルシーの現状整理と、クラシコアザールが出ている試合くらいしかマドリーを見ていないチェルサポの勝手な展望でした。質問や指摘等あればTwitterのリプにお願いします。それでは初のチェルシーvsレアル・マドリーの公式戦、それもチェルシーは久々のCL準決勝です!楽しみましょう!!!