Blues' notes

ロンドンの青いフットボールクラブ、チェルシーの試合やニュースについて思うままに書いてます

欧州最高の舞台を前に

日本時間5/30(日)の4:00から、いよいよ20/21シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝が行われます。

会場はイスタンブール🇹🇷から変更になり、ポルト🇵🇹の本拠地であるEstadio Do Dragaoに。

決勝はマンチェスター・シティvsチェルシーイングランド対決になりました。

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今回はチェルサポ目線で

1.両チームの状況

2.試合の展望と予想スタメン

3.注目選手

4.CL決勝の重み

5.個人的な思い

について書いてます。他サポも多く視聴するCL決勝ということで、プレミアを見ない人にも分かる文章を心掛けているので、最後まで目を通していただければ幸いです。特に4、5については僕が本当に伝えたい気持ちなので、そこだけでも読んでください。それでは。

 

 

1.両チームの状況 

シティ

ペップ5季目で、完成度はシティ史上最高レベルです。ルベン・ディアスの獲得を機に不安定だったストーンズが輝きを取り戻し、守備が改善。デブライネ、マフレズら元々いた攻撃的なタレントはそのままに、バックラインの不安が解消されたことで大きく進化を遂げました。

今季はCL制覇のためか、シーズン終盤にピークを持ってくるマネジメントを行ったと言われています。リーグ序盤はレスターに5失点の大敗を喫するなど苦しみましたが、尻上がりに調子が向上。鬼門のCLベスト8を越え、独走でプレミア優勝を果たしました。

リーグ最終節では今季退団のアグエロがエティハドでのラストゴールで自ら花道を作り、5-0勝利とコンディションは最高潮。怪我人もゼロで、まさに取るべくして取る状況が整ったという感じでしょうか。

 

チェルシー

夏に300億の大補強を敢行。結果として全員「当たり」だと言っていいと思います。ランパード政権下で一時はスパーズと優勝争いか?と言われましたが、12月に調子を地の底まで落とすと、戦術や決まり事の不足が囁かれて急転直下の監督解任劇。

それでも、後任のトゥヘルが3バックを導入して燻っていた選手たちを復活させるという鮮やかな手腕でチームに守備を植え付け、快進撃でCL決勝へ進出。リーグでも9位から4位まで引き戻し、CL権を何とか確保しました。

ただ、主力の怪我や深刻な決定力不足が尾を引き、マドリー戦前後の強さと勢いが削がれているのは懸念点です。怪我人としては、クリステンセンが負傷明け、カンテが強行出場可、最終節で負傷したメンディも恐らく間に合うという状態です。

 

 

2.試合の展望

上記を読んで察したかと思いますが、互いに「守備の安定」によってここまで上がってきたチームです。堅い試合が予想されます。

ハイプレスで高いポゼッションをキープして打開を図るシティと、相手にボールを持たせながらも決定機は作らせず、カウンターを狙うチェルシーという構図になるでしょう。

 

実際ペップ就任以降のこの2チームはそのような対戦が多いです。いつの時代もチェルシーの堅守速攻はシティを苦しめてきました。16/17(Away1-3)、18/19(Home2-0)、19/20(Home2-1)など

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逆に言えば、チェルシーがカウンターではない戦術を選択した時は試合にすらなっていません。18-19(Away0-6)、20-21(Home1-3)など。

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「ドン引きカウンター」に勝機を見出すチェルシーですが、それを行うには世界最高峰と言えるタレントが揃っています。対人最強のアスピリクエタとリュディガー、カウンターの申し子ヴェルナー、プレス回避名人のジョルジーニョコバチッチ、マウント、そしてカンテ。

 

これを崩すべく戦うシティもスター選手揃いです。スターリングは調子を落としていますが、デブライネ、マフレズらを擁する攻撃陣は何もないところからもゴールを生み出す脅威があります。

 

シティの基本戦術はハイプレスで相手を押し込み、ポジションチェンジによって守備に綻びを生み出します。深い位置に進出した選手の折り返しや、サイドのWGのドリブル突破、ワンタッチでの崩しなどあらゆる攻撃手段を持っており、並のチームでは攻められ続けたらいつかは決壊するでしょう。

 

一瞬のミスも許されないプレス合戦が続き、徐々にシティがボールを握る。そこからチェルシーがカウンターを繰り出すというのが前半の流れになると思います。それに合わせて両指揮官が戦術の修正を行い、後半も序盤は探り合う展開が予想されます。アグレッシブになるのはラスト15分。そこまでの展開次第でドラマがあるか、という感じが僕の展望です。

 

今季の両者の対戦は3回。シティの1勝2敗ですが、直近2試合は(特にシティが)メンバーを落としていたので力関係という意味では参考にはなりません。それでも、その2試合ではチェルシーが無理にボールを持とうとする姿勢は見られなかったので、概ね展望通りになると思っています。

 

さて、両チームの予想スタメンです。

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シティについては調子が加工気味のロドリ、カンセロをどう使うか、アグエロの出場はあるのかなどが注目です。ですが、怪我人もいないので概ねこのスタメンと見て良いと思います。

 

チェルシー側はいくつか気になる点が。やはり右CBとWBの人選、カンテ、メンディの出場、マウント以外の前線のメンバーは不確定です。

 

最近のリーグ戦ではジェームズがCBに起用され、アスピリクエタが右WBを務めています。しかし、クリステンセンが使えるとなれば彼がCBでスタメンを張り、アスピリクエタの右WBがベストです。スタメンが発表された段階でそもそもクリステンセンが出るのか、出ないならアスピリクエタとジェームズはどちらがCBなのかというのが一つ注目です。

 

また、カンテが90分持つかというのも問題です。マドリー戦で2試合とも最優秀選手に輝いた彼がここにきて負傷したというニュースは大きな打撃。コバチッチも負傷明けから2試合連続自陣でボールを奪われて失点に関与しており、厳しい状態です。カンテとジョルジーニョの2ボランチで行けることを祈ります。

 

前線の人選で悩ましいのは、序列の低いジェシュが大一番で得点を挙げているからです。現状、チェルシーの3トップはマウントが当確、次点でヴェルナーとハヴァーツ、その次にプリシッチ、そしてジェシュとオドイがジョーカー的に使われます。

 

ただ、ジエシュはCLアトレティコ戦、FA杯とリーグのシティ戦で得点しており、アヤックス時代もCLベスト16、準決勝でゴールを決めるなど大舞台に強いです。相性補完を考えるとスタメンはヴェルナー、マウント、ハヴァーツだと思いますが、個人的にはジエシュの試合を変える力に期待しています。

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3.注目選手

シティで今季特に輝いた選手といえばルベン、ギュンドアン、デブライネ、カンセロあたりでしょう。しかし、最も重要な役割を担っているのはフェルナンジーニョだと僕は思っています。

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守備の選手ですが縦パスやプレス回避の技術も当然備えており、なんと言っても相手が嫌がるプレーの達人です。2013年から在籍する最古参の1人で、36歳になった彼はライン間で受ける選手を潰し、相手が勢いよくプレスに来たらファウルを誘います。時間稼ぎやテクニカルファウルも上手く、まさに決勝で相手にいてほしくない選手の代表でしょう。

 

チェルシーは何と言ってもメイソン・マウント。少ないタッチ数で局面を変えるプレーは、彼のポジショニング、ボールタッチ、視野の広さ、俊敏性、キック力など様々な能力の高さの結晶です。

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チェルシーの攻撃はカウンター以外はっきり言って脅威ではありません。しかし、マウントが絡むと途端にスピードアップし、一気に期待感のあるシーンが生まれます。ポルト戦、マドリー戦のように消えていても一瞬で顔を出してゴールを取れる選手なので、天才の閃きに期待しています。

 

 

4.CL決勝の重み

ビッグイヤーの獲得は全世界のフットボーラーの悲願です。このタイトルがあるかないかは永遠にその選手の価値を分けます。イブラヒモビッチバラックブッフォンらの輝かしいキャリアはこの一つのタイトルがないだけで曇ってしまいます。「メッシはW杯を取れない限りマラドーナは越えられない」と看做されるのと同じです。

ジェラードが伝説となったのはなぜか。イスタンブールで逆転の狼煙を上げて奇跡を起こしたからです。

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モウリーニョがいまだに"スペシャルワン"と呼ばれるのはなぜか。アンダードッグだったポルトでCLを制したからです。

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現チームの主将で400試合以上出場しているアスピリクエタは、ビッグイヤーを掲げることができれば真のレジェンドとして記憶されるでしょう。この1試合は選手とクラブの価値を大きく左右します。

 

今の欧州サッカーに、CL優勝を果たした選手はどれくらいいるでしょうか。もはや現役でプルーしているのは、ほぼバルセロナ、マドリー、リバプールバイエルンで優勝を果たした一握りの選手たちに限られます。15年くらいの選手キャリアの中で、この舞台に立てるチャンスは運にも恵まれないと回ってきません。

人生に箔が付くかを賭けて戦うからこそ、そしてその重みが伝わってくるからこそ、ファンも緊張するし、メディアもこれだけ注目する。その重みを知って見れば、CL決勝が数倍面白くなるはずです。こいつらは人生を賭けて戦ってるのかと、分かっていればミスも笑えないしPKを外した選手も批判できない。真剣に見てこそ楽しめる試合だと思います。CLとW杯の決勝は。

 

特にシティとしては絶対にここで取りたいでしょう。アラブオーナーの買収から10年以上が経ち、ペップ政権も5年目。ペップとしては世界最高の監督という評価を受けながらも、バルセロナでの10/11以降10年間獲得できていないCLのタイトルです。

モナコに負け、リヨンに負け、壁と呼ばれたベスト8を乗り越えて機は熟したはず。マフレズ、デブライネらはキャリアのピークで、アグエロ(もしかするとフェルナンジーニョも)というクラブの大レジェンドはラストシーズン。相手はマドリーやバイエルンではなく、勝手知ったるチェルシー。絶対に逃せないチャンスです。

  

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ここに一つだけ足りないものがあるはず。それを取りたい気持ちは人一倍強いでしょう。

 

逆にチェルシー側は一見すると背負うものがありません。2012年、ドログバのラストキックでオーナーの悲願は達成され、軒並みピークを迎えていた主力たちはキャリアの終盤にこれ以上ない喜びを勝ち得ました。

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その前には、雨のロシアでテリーがPKを外し、手を掛けていたビッグイヤーがすり抜けて行ったこともありました。

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途方もない数のPKが見逃され、イニエスタにゴラッソをぶち込まれて準決勝で散ったこともありました。

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これらを経験したからこそ、11/12の優勝は特別な意味を持ったのです。

 

その夏に加入したアザールと過ごしたサイクルでは、残念ながらビッグイヤーに届きませんでした。彼の旅立ちを見送り、昨季ランパードの元で新たなサイクルを迎え、トゥヘルが突貫工事で整えたチェルシーは、言ってみればまだ2年生。未完のチームです。来季以降もっとよくなるのは確実で、「ここで取れなくても」という将来への期待感はあります。

 

しかし、それは外から見た場合の話。昨季パリで涙を飲んだチアゴ・シウバにとっては悲願ですし、アスピリクエタはクラブのレジェンドになるためにこのタイトルが必要です。リュディガーやカンテはキャリアのピークにいます。マドリーの優勝をベンチで眺めたコバチッチも、自分の価値を証明する機会がやっと巡ってきました。マウントら若手はここで優勝してEUROへ乗り込めば一躍世界的選手の仲間入りです。

 

29歳のジョルジーニョは10年前、当時セリエCのエラス・ヴェローナにいました。チェルシーに来た際には母親がメガストアに訪れ、夢を叶えた息子のユニフォームを見て涙を流していました。そんな彼がマドリーとの2ndleg、タイムアップの笛と共にピッチに崩れ落ちたシーンは僕にとって忘れられせん。

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彼の脳裏には、キャリアをスタートさせた頃にボロボロの芝でプレーをしていた自分の姿が映っていたかもしれません。そこから這い上がって欧州の頂点まで後一歩のところまで来た。あと一試合勝つだけ。彼の嬉し泣きが見たいです。

 

チェルシーというクラブとしても、シティにプレミアのタイトル数で追いつかれたことで燃えるプライドがあります。

 

"You'll never sing that. You'll never sing that.

'CHAMPIONS OF EUROPE'

You'll never sing that."

 

チェルシーサポーターがユナイテッド、リバプール以外との試合で歌う有名なチャントです。オイルマネーで成り上がったチェルシーが、本当の意味でメガクラブに数えられるようになったのは11/12のドラマがあったからでしょう。CL優勝は選手だけでなく、クラブの価値も変えます。

 

youtu.be

 

5.個人的な思い

まずは、"やるべきことをやり続けて"ようやくここまで辿り着いたシティと、この舞台で対戦できる幸せを噛み締めたいです。チェルシーはフロントと監督の連携、補強戦略等でリバプールやシティに遅れをとっています。

それでも、ランパードの元で花開いたアカデミーの選手たちは、クラブが長い年月をかけて投資を行い、欧州一となった育成組織の産物です。歩んできた道は間違っていなかったと、彼らが証明してくれれば、フロントも報われるでしょう。

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そして何より、トゥヘルに感謝したいです。昨季バイエルンに敗れた2試合で感じた圧倒的な差。あれは1年で覆せるものではないはずでした。何年で追いつけるんだろう。3年?5年?リバプールのようなフロント体制でないと現代サッカーでは生き残れないのか?絶望感はかなりのものでした。

その差を埋めたのは他でもないトゥヘルの手腕です。どん底にいた12月のチェルサポに夢の舞台を見せてくれてありがとう。勝っても負けても、これだけは伝えなくてはなりません。

 

最後に、チェルサポにもシティサポにも一つだけ言わせてください。勝っても負けても恨みっこなしです。ここ20年余り、CL決勝では様々納得いかない判定はあったかもしれません。それでも、どの優勝チームも勝つべくして勝っている。PKが見逃されようが、VARでゴールが取り消されようが、受け入れましょう。運も味方につけないと勝てないのがCLです。

 

さて、欧州サッカー20/21シーズン正真正銘最後の試合となります。CL決勝、楽しみましょう。

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